改訂新版 世界大百科事典 「ターミンジカ」の意味・わかりやすい解説
ターミンジカ
thamin deer
Cervus eldi
偶蹄目シカ科の哺乳類。前方に向かってのびる特異な第1枝の角をもつアジア産のシカ。エルドジカともいう。体色は暗褐色の地にわずかに斑点が認められ,雄のくびにはたてがみがある。体長180cm,肩高107~115cm,尾長20cm前後。アッサム,インドシナ,ミャンマー,タイ,海南(ハイナン)島などに分布し,かつては50頭を超える大きな群れがふつうに見られたが,狩猟のため,多くの地方で絶滅した。ふつう森林にすみ,昼の暑い時間を避けて,朝夕林縁部や草原に出て採食する。ただし,ミャンマー産の亜種は,とくにひづめが大きく,沼地の柔らかな土の上を歩くことができるばかりでなく,丈の高さ4~5mもの草の茂る浮島に乗って湖を漂いながら生活している。3~5月にかけて発情期をむかえ,子はふつう10~12月に生まれる。子には白い斑点がある。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報