海南(読み)かいなん

精選版 日本国語大辞典 「海南」の意味・読み・例文・類語

かい‐なん【海南】

[1] 〘名〙 南の海。また、その海に沿った地。
空華集(1359‐68頃)一・送攸知客帰海南宝陀「上人別我帰海南、南有宝陀青巉巉
[2]
[一] 四国の別称。
※星巖集‐甲集(1837)蠡海集・春晩絶句三首「又在海南杜鵑、風風雨雨落花天」
[二] 和歌山県北西部の地名紀伊水道に臨む。江戸時代から黒江塗の漆器、傘の生産で知られ、積出港の黒江、日方は廻船寄港地ともなった。現在は、埋立地に火力発電所、工場が進出し、阪神工業地帯の南縁を成している。昭和九年(一九三四)市制。
[三] 中国の唐代に驩州に置かれた郡。現在のベトナム北部。

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デジタル大辞泉 「海南」の意味・読み・例文・類語

かいなん【海南】

和歌山県北西部、紀伊水道に面する市。黒江漆の産地。家庭日用品産業が盛ん。人口5.5万(2010)。
四国の別称。
中国南部の省。海南島を中心とする島嶼からなる。省都は海口。人口。828万(2005)。ハイナン

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改訂新版 世界大百科事典 「海南」の意味・わかりやすい解説

海南[市] (かいなん)

和歌山県北西部,和歌山市の南に接する市。2005年4月旧海南市と下津(しもつ)町が合体して成立した。人口5万4783(2010)。

海南市東部の旧市。1934年黒江,日方,内海の3町と大野村が合体して市制。人口4万5507(2000)。海南湾黒江湾)に臨み,日方川および貴志川の流域(野上谷)を後背地に,近世以来商港として繁栄し,廻船問屋も多かった。特産品は黒江の漆器,野上谷のシュロ製品が主で,特に漆器は根来塗起源をもち,紀州藩の保護のもとに最も重要な産業であった。昭和30年代に原料の入手難から,ほとんどが低廉なプラスチック製品に代わったが,山中,会津と並ぶ漆器の大産地となっている。一方,シュロ皮加工業は原料を化学製品にかえて,ほうき,マットなどの和雑貨やロープ,漁網を生産している。古くは黒牛潟,名高浦と呼ばれた海南湾は,近世から塩田開発が行われ,1909年まで塩田として利用された。大正期から海岸を埋め立てて繊維産業が導入されたが,60年代半ばに県によって160haの埋立てが完成し,火力発電所,鋼管工場,石油精製所が立地した。JR紀勢本線が通じる。南隣りの旧下津町へ越える藤白坂は,熊野街道難所として著名であったが,海南湯浅道路の長峰トンネルが開通した。阪和自動車道のインターチェンジがある。
執筆者:

海南市西部の旧町。旧海草郡所属。人口1万4866(2000)。西は紀伊水道に面し,三方紀伊山地に囲まれる。リアス式海岸をなす下津湾は天然の良港で,大崎,下津,塩津の各港は近世には江戸航路の中継基地,避難港であった。1938年丸善石油,翌39年東燃の石油精製工場が設立されて下津は石油の町となり,48年には重要港湾の指定を受け,現在は県北部臨海工業地帯の中枢をなす。また古くからミカンの産地として知られ,山の斜面はミカン畑でおおわれている。紀伊徳川家の菩提寺長保寺があり,大門,本堂,多宝塔は国宝に指定されている。善福院釈迦堂(国宝),地蔵峰寺本堂,三郷八幡神社本殿など文化財が多い。JR紀勢本線,国道42号線が通じ,阪和自動車道のインターチェンジがある。
執筆者:

海南(徳島) (かいなん)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「海南」の意味・わかりやすい解説

海南
かいなん

徳島県南部、海部郡(かいふぐん)にあった旧町名(海南町(ちょう))。現在は海陽町(かいようちょう)の北半分を占める地域。旧海南町は、1955年(昭和30)浅川、川東(かわひがし)、川上の3村が合併、町制施行して成立。2006年(平成18)海部、宍喰(ししくい)の2町と合併、海陽町となった。JR牟岐(むぎ)線、国道55号(土佐浜街道)が通じ、国道193号を分岐する。太平洋に臨み、大里(おおざと)海岸や八坂八浜(やさかやはま)は室戸阿南(むろとあなん)海岸国定公園の一部に含まれる。地域の大部分は山地で、杉の美林地帯をなし、轟(とどろき)ノ滝の景勝地がある。中心の大里地区は徳島藩時代には土佐押さえのための海部城(鞆城(ともじょう)ともいう。海陽町鞆浦)の御鉄砲者が居住した地で、現在も槙(まき)囲いの家が迷路状に並ぶ。また大里に隣接する四方原(しほうはら)は江戸時代初期に開拓された新田集落であり、1998年には総合文化施設の阿波(あわ)海南文化村が開場した。地域の一部には両墓制が残る。八坂八浜には四国霊場別格4番札所鯖(さば)大師がある。

[高木秀樹]

『『海南町史』(1966・海南町)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「海南」の意味・わかりやすい解説

海南
かいなん

徳島県南部,海陽町北・東部を占める旧町域。南東部は太平洋に面する。 1955年浅川村,川東村,川上村が合体して町制。 2006年海部町,宍喰町の2町と合体して海陽町となった。大部分が山間部にあり,平地は少ない。南に接する海部と商圏を二分する県南の中心地。中心地区はマキ囲いの残る大里と土佐浜街道 (→土佐街道 ) 沿いの四方原。東の浅川は天然の良港で,漁港として発達。 1000m級の山が連なる平井は美林地帯である。海岸には室戸阿南海岸国定公園に属する八坂八浜,白砂青松の大里松原がある。平井の轟滝は四国一の大滝で,中部山渓県立自然公園に属し,あばれ神輿の祭りで知られる。

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