日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ダイバーシティーアンテナ
だいばーしてぃーあんてな
ダイバーシティー受信方式に用いるアンテナ。直接波だけでなく、建物による反射波や回折波が到来する場所では、複数のアンテナを空間的に離して受信すると、一方のレベルが低下しても他方のレベルは低下しない。この性質を利用して複数のアンテナを用いて安定した受信を行うことをダイバーシティー受信という。ダイバーシティー効果が最初に発見された短波通信や長距離無線回線のマイクロ波通信では、主として空間(スペース)ダイバーシティーが採用され、通常同じ構造、寸法のアンテナが使用される。また移動体通信基地局で使用されるスペースダイバーシティーアンテナも同一構造、寸法のアンテナを適当な距離を隔てて設置される。ただし一つのアンテナの照射角度範囲が120度である3セクターアンテナの場合3×2=6個のアンテナを設置する必要があるが、隣接するセクターのアンテナを密接してひとまとめに設置しているため、あたかも3本のアンテナが設置されているように見える。このように設置上のくふうがなされている。一方、携帯電話では、持ち方、携帯の仕方により携帯機アンテナの傾きがさまざまとなるため、基地局には偏波ダイバーシティー(空間的に離れた二つのアンテナのかわりに、同一場所の異なる二つの偏波、通常直交する偏波のアンテナ出力を用いるダイバーシティー)が有効であることがわかっており、1本のアンテナで直交する2偏波を出せる偏波共用アンテナもダイバーシティーアンテナとして使用されている。偏波共用アンテナをダイバーシティーアンテナとして使用すれば、スペースダイバーシティーの場合に比べアンテナ数を半減できるという利点がある。移動体側に用いるダイバーシティーアンテナも種々開発され実用化されている。たとえば自動車に設置するものとしては二つのアンテナを水平に約0.5波長の間隔をおいて並べたアンテナのほかに、垂直に並べたダイバーシティーアンテナも実用になっている。
[鹿子嶋憲一]
『藤本京平・山田吉英・常川光一著『図解 移動通信用アンテナシステム』(1996・総合電子出版社)』