ダニエル・キイス(読み)だにえる・きいす(その他表記)Daniel Keys

知恵蔵 「ダニエル・キイス」の解説

ダニエル・キイス

米国の小説家。1927年、アメリカ・ニューヨーク市生まれ。ブルックリンカレッジで心理学を学んだ後、雑誌編集やファッション写真撮影などの仕事を経て、ハイスクールの英語教師となる。このころから小説を書き始め、その一方でブルックリン・カレッジの大学院で学び、英語学とアメリカ文学の修士号を取得した。59 年、中編小説『アルジャーノンに花束を(原題 Flowers for Algernon)』を発表し、SF・ファンタジー・ホラーなどを対象とするヒューゴー賞を受賞。66年にはこれを長編化した同名の作品が、アメリカSF ファンタジー作家協会の選考によるネビュラ賞を受賞。世界的ベストセラーとなった。
66年、オハイオ大学の教授(英語学・創作)に就任。教鞭を執るかたわらベストセラー小説を次々と生んだ。解離性同一性(多重人格)障害の実在の患者を主人公とした作品である、80年発表の『五番目のサリー(The Fifth Sally)』と、81年発表の『24人のビリー・ミリガン(The Minds of Billy Milligan )』及びその続編、86年発表の『クローディアの告白-ある分裂症患者の謎(Unveiling Claudia: A True Story of Serial Murder)』など、心理学の知識と取材に基づくキイスの作品は大きな反響を得た。後に教授職を退き、専業作家となる。88年、ブルックリン・カレッジにより著名な卒業生を賞する名誉のメダルを授与される。2000年、オハイオ大学名誉教授に就任。
代表作『アルジャーノンに花束を』は、これを原作として世界中で映画・戯曲・ドラマなどがつくられ続けている。映画「まごころを君に(原題CHARLY)」(1968年)では、クリフ・ロバートソンがアカデミー主演男優賞を受賞。またフランス、ポーランド、日本では劇場版がつくられて上演されているほか、日本の番組制作によりNHKでも放映された。78年、早川書房から小尾芙佐(おびふさ)訳で長編版が翻訳出版され、知的障害を持つ青年が知能を高める手術を受けて変化していく様子を的確な日本語で表現した名訳で大好評を得た。2002年には、ユースケ・サンタマリア主演でテレビドラマ化され、関西テレビ系列で放映された。その他の作品も、日本では早川書房が翻訳出版権を独占し、出版されている。
14年6月15日、米フロリダ州の自宅で肺炎のため死去。享年86。

(葛西奈津子  フリーランスライター / 2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

知恵蔵mini 「ダニエル・キイス」の解説

ダニエル・キイス

米国の作家。1927年8月9日、米国ニューヨーク州生まれ。雑誌編集者、コミック原作者、ファッションフォトグラファーなどを経て、59年、知的障害者を主人公とした中編SF作品「アルジャーノンに花束を」を発表。翌年のヒューゴー賞短編小説部門を受賞した。66年には同作を長編として改めて出版し、ネビュラ賞に輝いた。同作は68年に「まごころを君に」(原題・Charly)として映画化されたほか、2000年・06年にも映画化され、日本では02年にテレビドラマ化された。1981年、解離性同一症(多重人格)の男性を追ったノンフィクション「24人のビリー・ミリガン」を、94年には続編「ビリー・ミリガンと23の棺」を発表し大きな話題となる。2000年にはオハイオ大学名誉教授となり、同年、アメリカSFファンタジー作家協会より名誉作家の栄誉を授与された。14年6月15日、死去。享年86歳。

(2014-6-19)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

20世紀西洋人名事典 「ダニエル・キイス」の解説

ダニエル キイス
Daniel Keys


1927 -
米国の作家。
1927年生まれの非常に寡作なSF作家。’59年に書き上げた「アルジャーノンに花束を」は、I Qを人工的に高められた後、減退する主人公の物語で、SFの分野における古典的短編といわれる。人間を被験体とする科学実験に対し、強く非難している。後に長編に引き伸ばされ、’68年「まごころを君に」という題名で映画化された。日本でも翻訳され、早川書房より出版されている。他に’68年発表のSF長編「タッチ」と、短編が6編ある。

出典 日外アソシエーツ「20世紀西洋人名事典」(1995年刊)20世紀西洋人名事典について 情報

367日誕生日大事典 「ダニエル・キイス」の解説

ダニエル キイス

生年月日:1927年8月9日
アメリカの作家

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

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