知恵蔵 「ダニエル・キイス」の解説
ダニエル・キイス
66年、オハイオ大学の教授(英語学・創作)に就任。教鞭を執るかたわらベストセラー小説を次々と生んだ。解離性同一性(多重人格)障害の実在の患者を主人公とした作品である、80年発表の『五番目のサリー(The Fifth Sally)』と、81年発表の『24人のビリー・ミリガン(The Minds of Billy Milligan )』及びその続編、86年発表の『クローディアの告白-ある分裂症患者の謎(Unveiling Claudia: A True Story of Serial Murder)』など、心理学の知識と取材に基づくキイスの作品は大きな反響を得た。後に教授職を退き、専業作家となる。88年、ブルックリン・カレッジにより著名な卒業生を賞する名誉のメダルを授与される。2000年、オハイオ大学名誉教授に就任。
代表作『アルジャーノンに花束を』は、これを原作として世界中で映画・戯曲・ドラマなどがつくられ続けている。映画「まごころを君に(原題CHARLY)」(1968年)では、クリフ・ロバートソンがアカデミー主演男優賞を受賞。またフランス、ポーランド、日本では劇場版がつくられて上演されているほか、日本の番組制作によりNHKでも放映された。78年、早川書房から小尾芙佐(おびふさ)訳で長編版が翻訳出版され、知的障害を持つ青年が知能を高める手術を受けて変化していく様子を的確な日本語で表現した名訳で大好評を得た。2002年には、ユースケ・サンタマリア主演でテレビドラマ化され、関西テレビ系列で放映された。その他の作品も、日本では早川書房が翻訳出版権を独占し、出版されている。
14年6月15日、米フロリダ州の自宅で肺炎のため死去。享年86。
(葛西奈津子 フリーランスライター / 2014年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報