日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダヌー」の意味・わかりやすい解説
ダヌー
だぬー
Danu
アイルランドのケルト神話に現れる女神。ブリテン島ではドーンとよばれて豊饒(ほうじょう)をつかさどる大地神であるが、天神ビレ(ベリ)を夫とし、ダヌー神族の祖とされる。この神族では女神が支配的な意味をもつが、そのことは前インド・ヨーロッパ語族の遺産とされる。ダヌーの子らは優れた文化の担い手で、鍛冶(かじ)神ゴイブニュは神々の武器をつくるだけでなく、不死のビールを醸し、また建築の神でもある。このほかに、ローマのユピテルに比せられる「銀手のヌアダ」、諸芸の神グウィディオン、女神アリアンロッド、農業神アマエトン、大地の神で不思議な大鍋(なべ)の持ち主ダグダ、詩の神ブリギト、海神マナナンなどがダヌー神族に属する。
[谷口幸男]