改訂新版 世界大百科事典 「ダムニェン」の意味・わかりやすい解説
ダムニェン
チベットを中心としその隣接地域ネパール,ブータン,シッキムおよび中国のチベット族の間で用いられるリュート属の撥弦楽器。正しくはダニェンsgra snyanと呼び,ダムニェンdram snyanは不正確な当て字である。中国では札木聶(チヤームーニエ)または六弦琴と呼ぶ。3コースの複弦(6弦)をもち,共鳴胴の腹面には動物の革(羊皮または蛇皮)を張る。細長い棹の頭部には通常,馬頭や竜頭の彫刻が施される。棹にフレットはない。調弦は通常4度-4度の関係(日本の三味線の三下りと同じ)でなされ,右手に小さな義甲を持って弾奏される。類似の弦楽器の図像は唐代高昌(新疆ウイグル自治区トゥルファン)に残されており,この楽器が古くはトルコ系の弦楽器クーブーズないしホブス(火不思)と関係をもっていたことが知られる。
執筆者:柘植 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報