弦楽器(読み)ゲンガッキ(その他表記)string instruments

デジタル大辞泉 「弦楽器」の意味・読み・例文・類語

げん‐がっき〔‐ガクキ〕【弦楽器/×絃楽器】

張られた弦の震動によって音を出す楽器の総称。震動を増幅するための共鳴胴をもち、奏法により、撥弦楽器擦弦楽器打弦楽器の3種に分類する。

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精選版 日本国語大辞典 「弦楽器」の意味・読み・例文・類語

げん‐がっき‥ガクキ【弦楽器・絃楽器】

  1. 〘 名詞 〙 一般に弦を発音体とする楽器。発音の手段は楽器により擦弦(こする)、撥弦(はじく)、打弦(うつ)の三種あり、古代のリュートハープから、近代のバイオリン属ギターなどを含む。弦鳴楽器。弦。絃。〔音楽字典(1909)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「弦楽器」の意味・わかりやすい解説

弦楽器 (げんがっき)
string instruments

弦を発音体として,これを振動させることによって音を出す楽器の総称。弦から音を得るためには,その両端を固定して十分な緊張状態にし,なんらかの方法でこれを振動させる必要がある。すなわち,こする,かく(またははじく),そして打つことであり,このような奏法から見ると弦楽器は,弓弦(ゆみづる)や棒でこすって鳴らすバイオリン,胡弓,牙箏などの擦弦楽器,爪や撥(ばち)でかき鳴らすギター,箏,ハープなどの撥弦楽器,そしてピアノやツィンバロム,洋琴のごとく,弦を桴(ばち)で打ち鳴らす打弦楽器とに大別される。

 世界の諸民族がつくり出し伝承してきたさまざまな弦楽器をホルンボステルとC.ザックスは,これらの構造と形態(そして奏法)とを総括的に観察し,弦楽器を次の五つのタイプに分類した。チター型,リュート型,ハープ型,リラ型,そしてハープ・リュート型である。チター型は弦の両端を固定すべき支え木としての棒,板,箱などを本体とするもので,ヨーロッパのチターをはじめチェンバロダルシマー,ピアノ,東アジアの琴(きん),瑟(しつ),箏(そう)など,(数本の)弦が楽器の本体と平行に張られているもの。楽弓や須磨琴のように1弦のものも含まれる。リュート型はヨーロッパのリュートやギター,バイオリンそして東アジアの琵琶や三味線のように,共鳴胴とそこからのびた棹から成り,弦の一端は棹の先端に固定され,棹の上を平行に走り,共鳴胴の下端に結びつけられる。ハープ型は数多くの弦が張られることが多いが,この弦がなす面が共鳴胴の響板と直角になるような構造をもつもの。ヨーロッパのハープをはじめ東アジアの箜篌(くご),ミャンマーサウンなどがこのタイプの弦楽器である。リラ型は共鳴胴から響板と平行に突き出した2本の腕木とこれを連結する横木から成り,数本の弦の一端はこの横木に結びつけられ,別の一端は共鳴胴の下端に固定される。リラ型の代表的な楽器は古代ギリシアのリラやキタラエチオピアクラールやベゲナなどで,東アジアにはこのタイプの弦楽器は存在しない。ハープ・リュート型に分類される弦楽器はアフリカに特有なもので,リュートのように棹が共鳴胴の響板の面と平行に突き出ているが,張られる数多くの弦がなす面は響板に平行ではなく,むしろハープのようにこれと直角をなす向きで,両脇に刻み目をもつ背の高い駒の両側に上下重なり合ってしかも2列に並ぶ。

 ここで弦楽器のタイプとその奏法および弦の数の多少についてふれておくと,チターやハープ,そしてリラとハープ・リュートはほとんど常に開放弦の状態で発音する。原則的に各弦が一つの音高しか発しないので必然的に弦数が増す。したがって,これらを多弦楽器とも呼ぶ。一方,リュート型の楽器は棹の上で弦の途中を押さえることによって振動部分の長さを変え,単独の弦からさまざまな音高を得ることができる。したがって,旋律弦の数は比較的少ない。ただし,これに共鳴弦やドローン弦が付加されることがあり,リュート型の楽器でもインドシタールサロードのようにかなりの弦数をもつものもある。

 弦楽器のもう一つの重要な側面は,弦の材質である。日本を含む東アジアでは古来,箏,琵琶,三絃,胡弓などすべての弦楽器の弦は絹糸で作られた。八音(はちおん)の中の糸すなわち絹が弦楽器の総称(すなわち,〈糸竹〉とは〈管絃〉を意味し,転じて〈音楽〉)とされたゆえんである。しかるに西アジアからヨーロッパにかけての遊牧民の文化では,弦の材質は羊腸弦すなわちガットが圧倒的に多い。9世紀のアラブの音楽理論家キンディーの著述から当時のウードは4弦のうち低いほうの3弦に羊腸弦を用い,最高音弦にのみ絹糸を用いたことが知られる。現今のウードにはナイロン弦が用いられるが,これは近年羊腸弦に取って代わったものである。この事情はヨーロッパのギターやバイオリンにも共通している。

 またスチール弦(鋼鉄線,ピアノ線)やシンチュウ弦など金属の弦も近年広く用いられるようになって,かつて絹弦や羊腸弦を用いていた楽器にも使われるようになっている(例えば,インドのシタール,サロード,中国の洋琴,箏,ベトナムの弾箏,ウズベクのドタールなど)。このほかに,馬毛弦が,弓弦のみならず旋律弦として用いられる場合も散見するし(スラブのグスラ,インドのチカラ,マグリブのアムズアドなど),また竹皮など植物の強靱な繊維が弦として用いられる楽器もある(カリンガ(フィリピン)のクリビト,マダガスカルのバリハ,バリのグンタンなど)。
楽器
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百科事典マイペディア 「弦楽器」の意味・わかりやすい解説

弦楽器【げんがっき】

を発音体として,その振動によって音を出す楽器。発音の方法によって,バイオリン胡弓(こきゅう)などの擦弦(さつげん)楽器,ギターやハープなどの撥弦(はつげん)楽器,ピアノダルシマーなどの打弦楽器に分類できる。また構造の上からはリラ系,ハープ系,ツィター系,リュート系に分類される。→楽器
→関連項目管弦楽ギターコントラバストレモロハープシコードビオラビオラ・ダ・ガンバビオラ・ダモーレマンドリン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「弦楽器」の意味・わかりやすい解説

弦楽器
げんがっき
stringed instrument

弦を発音体とする楽器の総称。弦を発音 (振動) させるには,弦を指や義爪などではじく (撥弦) ,弓で引く (擦弦) ,桴 (ばち) などでたたく (打弦) ,風で鳴らすなどの方法がある。一般的には楽器の形態によってツィター属,リュート属,リラ属,ハープ属の4種に分類される。楽器の構成部分はその種類によって異なるが,弦音を拡大するための共鳴胴,共鳴胴の弦に面する側の響板,リュート属特有の棹 (ネック) ,棹の前面部の指板と,弦を押す位置を示すフレット,張力を調整する糸巻,弦の振動を響板に伝えるブリッジなどがある。なお鍵盤を有するピアノやチェンバロも弦を発音体とする点で弦楽器と同じであることから,E.ホルンボステルや C.ザックスの分類法ではこれらも他の弦楽器と同様「弦鳴楽器」として扱っている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「弦楽器」の意味・わかりやすい解説

弦楽器
げんがっき

弦鳴楽器

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世界大百科事典(旧版)内の弦楽器の言及

【楽器】より

…旧石器時代になると,ブル・ロアラー(うなり木),法螺(ほら)貝および笛が現れ,新石器時代にはスリット・ドラム,一面太鼓,楽弓,パンの笛(パンパイプ),横笛,木琴,ジューズ・ハープ(口琴),葦笛など,豊富な種類の楽器が作られるようになった。さらに金属を用いるようになると,鐘やチター系弦楽器が現れる。さらにハープ系弦楽器は前3000年代に,両面太鼓は前2000年代に,シンバルやリュート系弦楽器,金属製のらっぱなどは前1000年以後に現れたといわれる。…

※「弦楽器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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