シッキム(読み)しっきむ(英語表記)Sikkim

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シッキム」の意味・わかりやすい解説

シッキム
しっきむ
Sikkim

インド北東部、ヒマラヤ山脈東部にある州。北および北東は中国のチベット自治区、西はネパール南東ブータン、南は西ベンガル州に接する。面積7096平方キロメートル、人口54万0493(2001)、61万0577(2011センサス)。州都ガントク

 大半が山岳地帯で、北西部には世界第3位の高峰カンチェンジュンガ山(8586メートル)をはじめ数多くの高峰がそびえる。中国との国境に源を発するティスタ川が州のほぼ中央を南流する。高度と地形の違いによって、気候は亜熱帯から寒帯にわたるすべての型を含み、植生も豊かで変化に富む。雪線のある標高5200メートルの地点から3600メートルまでの地帯は自然草地が卓越し、ヤク、ゾモ(ウシとヤクの交配種)などの放牧地に利用される。標高3600メートルぐらいまでの山腹斜面は針葉樹林に覆われ、ほぼ標高2100~1200メートルの山麓(さんろく)緩斜面が農耕地となっている。谷底平野の平均標高は230メートルで暑さが厳しく熱帯性植物が繁茂する。一般に雨量が多く、州都ガントクでは年降水量は3300ミリメートルに達するが、北部は乾燥地帯で年60ミリメートルにすぎない。

 住民は先住民族ロンレプチャ)人のほか、ボーティア人、東・中部ネパールから来住したリンブー人、グルン人、カミ人、ネワール人などのネパール系の民族グループからなる。主要言語はレプチャ語、ボーティア語、カースクラ語(ネパール系)で、公用語としては、これら三大民族の言語のほか英語が指定されている。識字率は57%(1991)である。宗教はネパール人はヒンドゥー教を、ボーティア人、ロン人はチベット仏教(ラマ教)を信仰している。

 おもな産業は農業で、米のほかトウモロコシ、キビカルダモン、オレンジ、リンゴ、ジンジャー、豆類を産する。森林資源も豊かで1000平方キロメートルを占める。鉱物資源としては銅、亜鉛、錫(すず)を産出する。工業部門では皮革、釘(くぎ)、ろうそく、マッチ、じゅうたん、製紙、銀細工など伝統的な軽工業のほか、時計工場も開設されている。また、観光資源にも恵まれ、州政府がホテルや幹線道路の建設、整備に力を入れている。州都ガントクへは、コルカタカルカッタ)から飛行機で西ベンガル州のバグドグラを経由する経路と、コルカタからシリグリまで鉄道、以後定期バスを利用する経路がある。

[米田 巌]

歴史

最初の住民はロン人であったが、17世紀初頭に中国人に追われたチベット仏教の僧が来住して以来、チベット系の住民ボーティア人がチベット仏教を国教としてシッキムの支配権を掌握した。1642年にはチベット人の王を擁立してシッキム王国の基礎を築いたが、実質的には18世紀末までチベットの属領であった。しかし、イギリスがネパール・シッキム戦争に介入するに及んで、1839年イギリスの東インド会社がダージリン地区の獲得、領有を宣言し、1849年にはタライ平野とティスタ川下流域を領有、1890年にはシッキム全域をイギリス領インドの保護下に置いた。1947年インドの独立とともにインドがシッキムの外交、国防の任にあたった。1950年正式にインドの保護領となり、1974年に準州、1975年5月に第22番目の州となった。

[米田 巌]

『V・H・コエルオ著、三田幸夫他訳『シッキムとブータン』(1973・集英社)』

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