改訂新版 世界大百科事典 「クーブーズ」の意味・わかりやすい解説
クーブーズ
qubuz[トルコ]
中央アジア,西アジアおよび東ヨーロッパの撥弦楽器の一種。木の胴体に皮を張り,胴より長い棹をもつリュート属の楽器で,トルコではすたれた。中国西域の高昌の発掘資料などから,モンゴル,中央アジア方面にいたトルコ族の楽器と考えられ,後にイスラム時代のアラビアからエジプトにまで広がる一方,中国には元時代にイスラム教徒の楽器として渡り,ホブス(火不思)と音訳された。清代にも同類の楽器が新疆のトルコ人の楽器として献じられた記録がある。
現在の新疆ウイグル自治区には,コムズ(考姆茲)と呼ばれる3弦の撥弦リュート楽器があり,当地および中央アジアのキルギス族が最も好むものである。一方,ウイグル族は,清代のホブスに形がよく似た楽器であるルバーブを奏する。これはまたチベットのダムニェンと同類の楽器であり,後の中国の三弦つまり日本の三味線の元祖ともいうべき楽器である。また東欧ではコブーズkobus,コブザcobzaなど,いろいろの名称が短い棹のリュート属の撥弦楽器に付けられている。
執筆者:小柴 はるみ
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報