当て字(読み)アテジ

デジタル大辞泉 「当て字」の意味・読み・例文・類語

あて‐じ【当て字/宛字】

日本語を漢字で書く場合に、漢字の音や訓を、その字の意味に関係なく当てる漢字の使い方狭義には、古くから慣用の久しいものについていう。「目出度めでたし」など。借り字。

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精選版 日本国語大辞典 「当て字」の意味・読み・例文・類語

あて‐じ【当字・宛字】

  1. 〘 名詞 〙 漢字本来の意味に関係なく、その音、訓だけを借りて、ある語の表記に当てる漢字の用法借字。「浅増(あさまし)」「目出度(めでたし)」「矢張(やはり)」「野暮(やぼ)」の類。
    1. [初出の実例]「むつかし、如何。六借とかきあひたるは、あて字歟」(出典:名語記(1275)九)

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改訂新版 世界大百科事典 「当て字」の意味・わかりやすい解説

当て字 (あてじ)

漢字を,中国における原義また後世日本における転義によらず,たんにその読み方が同じだというところから,別語原の語の表記に用いたもの。社会的に習慣の固定したものと,社会習慣とは無関係に臨時に用いられたものとがある。学生の答案に当て字が多いなどといわれる場合は後者で,多くは社会習慣上の正しい語表記または正しい字義を知らずに,ただ同音訓の漢字を用いるのである。これは誤解を生じやすく,かつ語表記を不必要に多様にするもとであって,放任しておくべきではない。社会習慣となっている当て字は,六書(りくしよ)の仮借(かしや)と本来の性質を同じくするが,通例は2字または3字の連結である。もと臨時の個人的な誤用に始まるものもあろうが,ニュアンスの上などから中国語への適訳を求めがたい語,とくに俗語について案出されたものが多い。歌舞伎かぶき),囲炉裏いろり),目出度(めでたく)または芽出度,屹度(きつと),丁度(ちようど),呉々(くれぐれ),出鱈目(でたらめ),天晴(あつぱれ),仕間敷(しまじく)など。これらは本来,かなを用いない変体漢文,候文,また漢和連句などにおける必要から出たのであるが,近年まで自立語はなるべく漢字で書こうとする気風があってそのためにこれらの当て字が重用された。このことは,外国の固有名詞が伯林(ベルリン),倫敦(ロンドン),該撒(カイゼル)などのように音訳され(中国起原にもせよ),普通名詞も俱楽部(クラブ),襦袢(じゆばん),型録(カタログ),混凝土(コンクリート),背広(せびろ)など工夫をこらした表記が好まれたのと相通ずる。文字面を有意味らしく見せかけるのは,漢字の性質から当然であるが,その表記が一種の語原俗解の結果であると同時に,新しい解釈が固定した文字面から行われがちである。また言葉(ことば),出来(でき)などを,それぞれの文字の正当な意義用法によらぬとして,当て字にふくめることがある。さらに,土産(みやげ),銀杏(いちよう),今日(きよう),三和土たたき),煙草(たばこ),麦酒(ビール),天鵞絨ビロード)など,漢字2,3字の結合を一々の字の音訓によらずに,全体として一つの単語にあてる(熟字訓という)場合をも,当て字という人が近来はある。常用漢字表および同音訓表の適用にあたってはこれらの当て字は一括して排斥されつつあるが,一方,常用漢字表以外の漢字を使わないようにするために行われる,銓衡→選考,落伍→落後,繃帯→包帯のような書きかえは,主として漢語についてであって,当て字とは呼ばれていないが,新たに作られつつある当て字といえよう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「当て字」の意味・わかりやすい解説

当て字
あてじ

日本語を表記する際に、その語と意味のうえで直接関係のない漢字の和訓字音を借用する用法、またはその漢字をいう。「宛字」とも書く。本来、漢字を用いて日本語を書き表すには、「やま―山」「たに―谷」のように、意味上の対応関係をもつ漢字を使うのが通常であるが、対応する漢字がない場合に、便宜的にある漢字の音や訓を借りて書き記し、さらに和語以外の外来語、外国語の表記にも及んだ。これが「当て字」である。

 これには、広く社会に認められた慣用的な表記と、個人的な臨時の表記(しばしば「誤字」とされる)を含む。前者には亜細亜(アジア)、仏蘭西(フランス)、珈琲(コーヒー)のように外来語や外国の固有名詞を漢字の音を借用して表記したもの、素敵(すてき)、兎角(とかく)のように漢字音を借りて和語を記すもの、背広(せびろ)のように漢字の和訓を借用して外来語を表記するもの、矢張(やはり)、出鱈目(でたらめ)のように漢字の和訓を借用して和語を表記するものなどがあり、実際には型録(カタログ)のように、これらの用法が組み合わされることも多い。このほか、五月雨(さみだれ)、紅葉(もみじ)のように和語一語を漢字2字また3字で表記するもの(熟字訓)や、選考、世論のように、当用漢字(現在は常用漢字)の施行に伴って書き換えられた(銓衡(せんこう)、輿論(よろん)から)ものも当て字とされることが多い。

[月本雅幸]

『亀井孝・大藤時彦・山田俊雄編『日本語の歴史』7巻・別巻(1963~1966・平凡社)』

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