日本大百科全書(ニッポニカ) 「チエンツァイ」の意味・わかりやすい解説
チエンツァイ
ちえんつぁい / 前菜
中国料理の卓料理の際、本菜(ペンツァイ)に先だって食卓に出る料理で、酒の肴(さかな)に適するものが多い。通常冷たい料理を用いるので冷葷(ロンフン)、冷盤(ロンパン)、冷菜(ロンツァイ)ともいう。普通の筵席(イエンシー)(宴会席)ではチエンツァイとしては冷葷だけでよいが、大筵席ともなると冷葷だけでなく、熱盤(ローパン)(温かい前菜)も出す。この場合は、冷盤が先に卓に並べてあり、客が着席して食事が始められてから熱盤を供する。チエンツァイとして熱盤だけを供することはない。冷葷は冷たいほうがおいしい料理、また冷たくてもおいしい料理でなければならない。卓上に幾種類かのチエンツァイが同時に並ぶので、味の調和はもちろんのこと、材料の配合、色彩などに注意しなければならない。本来チエンツァイは、2、4、6と偶数の皿数にそれぞれ一品ずつ料理を盛るが、近年大皿にチエンツァイを盛り合わせることが多くなった。すなわち花鳥その他の図柄を大皿に冷菜で美しく描き、他の冷菜とともに供するのである。これを拼盤(ピンパン)という。チエンツァイの料理には、白片肉(パイピエンロウ)(豚水煮薄切り)、チャーシュー(焼き豚)、塩酒鶏(イエンチウチー)(鶏の煮こごり)、拌鮑魚(パンパオユイ)(鮑(あわび)の冷菜)、ピータン(松花蛋(ソンホワタン))、拌海蜇(パンハイチヨー)(クラゲの酢の物)、ルーイーチュワン(魚の卵巻き)、紅燉腐皮捲(ホントウンフーピーチユワン)(ハムの湯葉巻き)などがある。
[野村万千代]