改訂新版 世界大百科事典 「チオエーテル」の意味・わかりやすい解説
チオエーテル
thioether
2価の硫黄原子に炭化水素基が結合した形の有機化合物R-S-R′。エーテルの酸素原子の代りに硫黄原子が入った構造であることから,チオエーテルと総称されるが,個々の化合物はメチルフェニルスルフィドCH3SC6H5,ジメチルスルフィドCH3SCH3などのように二つの炭化水素基名を冠してスルフィドsulfideと命名される。一般に無色の液体で,特有の臭いをもつ。たとえば,ニンニク,ニラ,タマネギなどの臭気成分にはジアリルスルフィド(CH2=CH-CH2-)2Sが含まれている。脂肪族チオエーテルは,チオラート(RSNaなどチオールの金属塩)とハロゲン化アルキルの反応で合成される。芳香族チオエーテルは芳香族ジアゾニウム塩にチオラートを作用させても得られる。チオエーテルを過酸化水素や過安息香酸でおだやかに酸化するとスルホキシドsulfoxideとなり,さらに強く酸化するとスルホンsulfoneになる。
ヨウ化アルキルとの反応では結晶性のスルホニウム塩sulfonium saltを形成する。
執筆者:小林 啓二
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