改訂新版 世界大百科事典 「ツァイゼ塩」の意味・わかりやすい解説
ツァイゼ塩 (ツァイゼえん)
Zeise's salt
化学式K[PtCl3(C2H4)]・H2O。トリクロロ白金(Ⅱ)酸カリウムの俗称。1830年ころツァイゼW.C.Zeiseにより初めてつくられた。ツァイゼは塩化白金(Ⅳ)をエチルアルコールで処理し,塩化カリウムを加えてつくった。塩化白金(Ⅱ)の塩酸溶液に直接エチレンを通じても得られる。黄色結晶。融点170~180℃。[PtCl3(C2H4)]⁻の構造はPtを中心とする平面正方形の頂点に3個のClとC2H4の中心とがあり(図),C2H4はC-C軸を平面に垂直にして二重結合で配位しており,不飽和炭化水素を配位する錯体として得られた最初のものである。アセトン,クロロホルム,アルコール,エーテルなどの有機溶媒に溶ける。
→π錯体
執筆者:近藤 幸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報