エチレン(その他表記)ethylene

翻訳|ethylene

デジタル大辞泉 「エチレン」の意味・読み・例文・類語

エチレン(ethylene)

二重結合をもつ炭化水素の一。無色の可燃性の気体。プロピレンとともに石油化学工業で重要な原料で、ポリエチレン塩化ビニル酢酸などの合成に利用。また、植物ホルモンの一種で、果実の熟成を促進するが、傷害などによっても産生され、成長抑制作用もある。分子式C2H4 示性式CH2=CH2 エテン。

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共同通信ニュース用語解説 「エチレン」の解説

エチレン

石油化学製品の原料となる無色の気体。プラスチックや繊維、塗料に加工されて、自動車、家電、建材といった多様な製品に利用されている。甘い香りがあり、引火しやすい。日本メーカーの間では、ナフサ(粗製ガソリン)を加熱して分解する製造法が主流となっている。米国では、新型天然ガス「シェールガス」をもとに生産するエチレンが増えている。用途が幅広く、需要動向が世界経済の状況に大きく左右されるため、生産設備が過剰になる恐れをはらんでいる。

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精選版 日本国語大辞典 「エチレン」の意味・読み・例文・類語

エチレン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] ethylene ) エチレン系炭化水素の一つ。化学式 CH2=CH2 で二重結合をもっている。無色で甘味臭をもつ引火性の気体。天然ガス、石炭ガス中にも含まれるが、工業的には石油留分の高温分解で得られる。ポリエチレンなど合成化学工業原料に用いられるほか、吸入麻酔剤にも用いる。

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改訂新版 世界大百科事典 「エチレン」の意味・わかりやすい解説

エチレン
ethylene

二重結合をもつ脂肪族不飽和炭化水素(アルケン,オレフィンという)のうちで最も簡単なもの。化学式CH2=CH2。工業的には,ふつう石油の高温熱分解によって製造されるが,ときにコークス炉ガスなどからの分離,エチルアルコールの脱水,アセチレンの部分水素化などの方法で生産される例もある。エチレンはプロピレンと並んで,今日の有機合成化学工業の最も重要な脂肪族系の出発原料である。

常温・常圧下では無色,無臭の可燃性の気体で,沸点-103.7℃。空気中では2.8~36容量%の範囲で爆発的に燃焼する。水にはほとんど溶けないが,アルコール,エーテルにはよく溶解する。二重結合をもつので化学反応性に富み,いろいろな付加反応を起こす。たとえば,ニッケル触媒上で水素と反応してエタンとなり,塩素が付加すれば1,2-ジクロロエタンとなり,塩酸が付加すれば塩化エチルとなる。また硫酸の存在下で水の付加反応によりエチルアルコールを生ずる。さらに,ある種の触媒の存在下で重合してポリエチレンをつくる。これらの化学反応については用途のところで述べる。

(1)石油化学法 石油炭化水素を750~850℃の高温度で熱分解すると,エチレン,プロピレンなどのオレフィン類が生ずる。どのような石油留分を原料とするかは各国の資源やエネルギー事情によるが,日本やヨーロッパ諸国ではナフサが用いられる。ナフサを原料としてオレフィンを生産する方法を一般にナフサ分解という。アメリカやカナダでは天然ガス(エタン,プロパンを多く含む)が豊富に産出されるので,これをエチレンの主原料としている。エチレンは軽油や重油などの重質な石油からもその高温熱分解により生産できるが,石油製品の需給関係や価格事情により,現在はあまり用いられていない。

(2)エチルアルコール脱水法 デンプンや糖の発酵によって得られるエチルアルコールをアルミナなどの酸性触媒の存在下で加熱すると,脱水反応によってエチレンが生ずる。この方法はブラジルなど肥沃な土地や太陽と水に恵まれた国では経済的に成立しうる可能性があるが,一般的には逆に石油から得られるエチレンを水和してエチルアルコールを生産するほうがふつうである。

(3)工業ガスからの分離 コークス炉ガス,石油精製における熱分解プロセスなどのガス中にはエチレンが含まれる。これらのガスから深冷分離法によりエチレンや水素を分離,回収することができる。深冷分離とは,ガスを加圧,冷却(摂氏マイナス数十度)して精密蒸留する技術をいう。

1981年における日本のエチレン需要は約370万tであり,そのうちの約46%はポリエチレン製造用(高圧法ポリエチレン用が第1位で約28%を占め,さらに低・中圧法ポリエチレンが約18%)である。これに続いて塩化ビニル,アセトアルデヒドエチレンオキシドエチレングリコール,スチレンなどが重要な合成化学的用途である(2005年のエチレン生産量は約760万t)。エチレンからの主要な誘導体は図1に示すとおりである。次にそれぞれの化学反応について解説する。

(1)ポリエチレンの製造 反応圧力によって高圧法,中圧法,低圧法に分類される。高圧法はエチレンを1000~3000気圧に加圧し,酸素や有機過酸化物などの重合開始剤を加え,100~200℃に加熱し,管状の重合反応器で重合を行う。この重合反応は大きな発熱を伴うので反応管を冷却する。反応器から出るポリエチレンからワックス状の低分子量体や未反応エチレンを分離する。中圧法は数十気圧の圧力下で酸化モリブデンや酸化クロムを触媒として130℃前後の温度で懸濁重合あるいは溶液重合を行う。低圧法はチーグラー触媒を用いて常圧付近,60~100℃の温度で懸濁重合を行う。また最近,7~20気圧,60~100℃で気相重合を行う方法も開発された。この方法は触媒の分離工程を必要とせず,省エネルギープロセスとして注目を集めている。

(2)塩化ビニルの製造 エチレンに塩素を付加するか,または塩化水素と酸素を作用させる(オキシ塩素化反応)ことによって1,2-ジクロロエタンを得て,これを450~500℃で熱分解すれば塩化ビニルモノマーが得られる。さらにこれを過酸化物などを触媒としてラジカル重合を行えば,ポリ塩化ビニルが製造される。

(3)エチレンオキシドの製造 銀触媒を用いてエチレンを酸素酸化すればエチレンオキシドが得られる。エチレンオキシドを加水分解すればエチレングリコールが生産される。エチレンオキシドの大部分はエチレングリコールに変えられて,ポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸と反応)繊維およびフィルムの製造に,またエンジン用不凍液の製造に用いられる。

(4)アセトアルデヒドの製造 エチレンを塩化パラジウムを触媒として酸素酸化してアセトアルデヒドが生産される。このプロセスはヘキスト・ワッカー法と呼ばれる。アセトアルデヒドは化学反応性に富み,酢酸,無水酢酸,過酢酸,酢酸エチル,アルドール,クロトンアルデヒドペンタエリトリットパラアルデヒド,クロラールなどが合成される。

(5)スチレンの製造 ベンゼンを酸触媒の存在下エチレンによってアルキル化してエチルベンゼンとし,エチルベンゼンを脱水素すればスチレンが得られる。スチレンはブタジエンと共重合反応させて合成ゴムを生産するなど高分子合成化学原料として重要である。

(6)そのほか,エチレンはプロピレンと共重合してエチレン・プロピレンゴム(EPR)を与え,酢酸ビニルを経てポリビニルアルコール(ポバール)をつくる。また,トリエチルアルミニウムなど合成化学的に有用な有機金属化合物を与えるなど,精密化学の分野でも重要な役割を果たしている。
執筆者:

19世紀末には,ヨーロッパ各地でガス灯用のガス管の破損によるガスもれが街路樹に有害で異常な形態の変化をもたらすことが知られていたが,1901年にオーストリアの若い科学者ネルジュボフD.N.Neljubowが実験室内や温室内で生育させたエンドウの芽生えにみられる形態の異常について,それがガス中のエチレンによるものであることを示した。のちに,カビ類,細菌類の一部と大部分の高等植物で,植物体自身がエチレンを生成し,それが植物の正常な生長過程における調節に一役かっていることが明らかとなるに及び,エチレンは植物ホルモンの一種と認められるようになった。

 エチレンは次のような多くの生理学的作用をもつ。(1)果実の成熟促進(図2)。自然条件では果実自身が生成するエチレンによって成熟が引き起こされる。成熟した果実は大量のエチレンを発生するので,果物倉庫の中で一部分の果物がなんらかの理由(傷など)で早く成熟すると,これを中心(ripe spotと呼ばれる)にしてまわりの果物がつぎつぎと成熟していく。(2)茎や根の伸長を抑制し肥大生長を促進するので植物体はずんぐり型となる。ただし,イネ幼葉鞘(ようしよう)は例外的に伸長が促進される。(3)側芽生長の阻害。頂芽から送られてきたオーキシンが側芽でのエチレン生成を促すことによるものとされている。(4)上偏生長。葉柄の上側の伸長が促進されて下へ曲がる。(5)茎の重力屈性(屈地性)の消失(図3)。(6)鉤(かぎ)状部の形成。エンドウ黄化芽生えの上胚軸の先端に近い部分は大量のエチレンを生成し,鉤状に曲がった形になっている(図3)。赤色光を当てるとフィトクロムの働きを介して,エチレン生成が低下し上胚軸は腰を伸ばしたようにまっすぐになる。(7)落葉・落果の促進。アブシジン酸の場合よりも直接的だと考えられている。(8)ジャガイモ塊茎の芽,クローバー,チシャなどの種子の休眠解除。(9)花の性の決定。キュウリの花(雌雄異花)の雌花への分化を促進する。(10)花芽分化の促進。パイナップルの花芽分化を早める。

 上記の変化は多くの場合0.01~0.1μl/lという低い濃度のエチレンで認められ,1~10μl/lで最大効果を示す。詳しい作用機作はまだわかっていないが,(7)の場合に離層部におけるRNA,タンパク質合成が特異的に促進されることが知られている。二酸化炭素はエチレンの作用を拮抗的に阻害する。果物の貯蔵・輸送に際して傷つかないように((1)参照)包装したり,二酸化炭素中に貯蔵したりするのは,過熟を防ぐためである。

 接触,切断などの機械的刺激のほか放射線照射,薬品傷害,病害などあらゆる異常な環境はエチレン生成を増大させるので,エチレンがそのあとで始まる防御機構としての一連の生化学的変化の引金となるのではないかと考えられている。高濃度のオーキシンもエチレンの合成を誘導する。

 生合成経路は次のように考えられている。メチオニン→S-アデノシルメチオニン→1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸→エチレン。エチレンの生成には酸素が不可欠である。生成されたエチレンが植物体内でどのように代謝されているかはまだよくわかっていない。

 なおエチレンは,バナナなどの追熟,かんきつ類の催色に以前から実用されてきたが,保存・処理が困難なため,近年では容易に分解してエチレンを発生する2-クロロエチルホスホン酸(商品名エスレル)などの散布剤が開発され,広く果実の成熟促進に用いられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エチレン」の意味・わかりやすい解説

エチレン(植物ホルモン)
えちれん
ethylene

植物ホルモンの一種。常温で気体の単純な炭化水素化合物CH2=CH2であることが、他の植物ホルモンと比べて著しく異なる。エチレンの代表的作用は果実の成熟促進である。アボカド、イチジク、カキ、トマト、ナシ、バナナ、マンゴー、リンゴなどの果実では成熟が始まる前にエチレンが増加する。そして果実の成熟の進行とともに呼吸が著しく増加する。これが引き金となってエチレンが急激に増加して、果肉の軟化など追熟がおこる。このような型の果実はクリマクテリック型果実とよばれる。これに対して、エチレンの生成が低い果実は非クリマクテリック型とよばれ、イチゴ、サクランボ、スイカ、パイナップル、ブドウなどがある。エチレンは果実の組織で細胞壁の分解にかかわるポリガラクチュロナーゼやセルラーゼという酵素の合成を誘導して、果実の軟化を促す。エチレンはほかに、落葉・落果の促進、茎や根や芽の伸長抑制、不定根形成、細胞肥大、ある種の植物の種子発芽、パイナップルやマンゴーの花芽形成などを促進する。また、カーネーションの花の眠り、カトレアの花の傷害などをもたらす。

 エチレンはアミノ酸の一種であるメチオニンがS-アデノシルメチオニン(SAM)に変わり、1-アミノシクロプロパン―1-カルボン酸(ACC)を経て生合成される。エチレン合成はオーキシン(植物ホルモン)によって誘導される。また、病害、傷害、接触などの機械的刺激といったストレスを受けると、多量のエチレンを生成する。これらの場合、いずれもエチレン合成における調節酵素であるACC合成酵素の合成を通してエチレンの生成が調節される。

 エチレンはトマトやバナナの成熟促進、アイリス、スイセン、フリージアなどの球根の休眠打破と花成の促進、パイナップルの開花促進に使われている。また、茎を肥大させる効果を利用してモヤシの栽培にも使われている。野菜や果物は収穫後も自ら出すエチレンのせいで老化が進行する。そこで、エチレンの生成や作用が抑えられるように高二酸化酸素(CO2)、低酸素(O2)の条件下でCA貯蔵(controlled atmosphere storage)が行われている。また、エチレンを吸収する過マンガン酸カリウムのような吸着剤を用いたり、特殊な加工をほどこしたポリエチレンフィルムの袋が使われている。切り花の鮮度を保持するためには、エチレン合成を阻害する化合物が用いられる。

[勝見允行]

『増田芳雄著『植物生理学』(1988・培風館)』『下川敬之著『エチレン』(1988・東京大学出版会)』『倉石晋著『植物ホルモン』(1988・東京大学出版会)』『勝見允行著『生命科学シリーズ 植物のホルモン』(1991・裳華房)』『増田芳雄編著『絵とき 植物ホルモン入門』(1992・オーム社)』『高橋信孝・増田芳雄編『植物ホルモンハンドブック』下(1994・培風館)』『漆崎末夫著『農産物の鮮度保持――エチレン制御とその利用』(1997・筑摩書房)』『今関英雄・柴岡弘郎編『植物ホルモンと細胞の形』(1998・学会出版センター)』『小柴共一・神谷勇治編『新しい植物ホルモンの科学』(2002・講談社)』


エチレン(脂肪族不飽和化合物)
えちれん
ethylene

もっとも簡単なアルケン。正式の命名法に従うとエテンetheneというが、慣用名のエチレンがよく用いられる。

 その分子構造は次の通りである。すなわち、炭素‐炭素二重結合の間隔は飽和炭化水素のエタンなどの154ピコメートルに比べて短いが、それに結合する水素との結合間隔はエタンと等しく110ピコメートルである。


 エチレンは石油化学工業のもっとも基本的な物質であり、したがって合成有機化学工業においてきわめて重要な物質であり、その生産量ないしは使用量は、その国の化学工業の規模を示す尺度になるともいわれる。

[徳丸克己]

製造法

石油化学工業では、原油を蒸留後、エチレンよりも分子量の多い飽和炭化水素(アルカン)の留分をクラッキング(熱分解)して製造する。日本とヨーロッパでは主としてナフサを原料とし、天然ガスの豊富なアメリカではエタンやプロパンを原料として熱分解を行う。クラッキングでは、これらの原料の蒸気を水蒸気で希釈し、800℃程度に加熱した炉に1秒あるいはそれ以下の接触時間で通過させ、生成するエチレン、水素およびその他の炭化水素を分離精製する。一般に石油化学コンビナートはエチレンの製造プラントを中心として成り立っている。日本はアメリカに次いで世界第2位のエチレン生産能力をもち、年間約800万トン生産される。

[徳丸克己]

性質

無色の芳香性をもつ可燃性の気体。空気との混合物は引火すると爆発をおこしやすく、また空気中では煤(すす)の多い赤い炎をあげて燃える。二重結合をもつので、反応性が高く、付加反応をおこしやすい。酸性で水を付加させてエタノール(エチルアルコール)とし、また銀触媒を用いて酸素によりアセトアルデヒドあるいは酸化エチレン(オキシラン)に酸化する。後者は重合させてカーボワックス(ポリエチレングリコール)とし、各種の基材に利用される。また塩化パラジウムを触媒として水中で酸素と反応させ、アセトアルデヒドとし、これから酢酸を製造する。さらにツィーグラーらが開発したトリエチルアルミニウムを用いる触媒により重合させてポリエチレンをつくる。

[徳丸克己]

用途

エチレンには果実を成熟させるなど植物に対する生理作用があるので、青いバナナをエチレンで処理して黄色くするのに用いられる。しかし、エチレンのおもな用途は、エチレンを原料として多数の有用な物質、すなわち、合成繊維、合成樹脂、合成塗料などやそれらの製造のための中間体を製造することにあり、石油化学工業の基幹をなすものである。たとえば、エチレンの酸素酸化で生成する酸化エチレンを水と反応させて得られるエチレングリコールをテレフタル酸と重合させてポリエチレンテレフタラートを製造する。これはポリエステルの一種で繊維をはじめ各種の用途に用いられる。

[徳丸克己]


エチレン(データノート)
えちれんでーたのーと

エチレン
  H2C=CH2
 分子式 C2H4
 分子量 28.1
 融点  -169.2℃
 沸点  -103.7℃
 比重  0.6246(測定温度-145℃)

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百科事典マイペディア 「エチレン」の意味・わかりやすい解説

エチレン

化学式はCH2=CH2。特有の甘い香りのある無色の気体。融点−169℃,沸点−103.9℃。二重結合をもつため反応性に富み,ハロゲン,ハロゲン化水素,硫酸,水などと付加化合物をつくり,また触媒存在下で重合してポリエチレンとなる。リンゴ,モモ,バナナなどの果実の成熟に際して発生し,成熟を促進する作用があり,植物ホルモンの一種とされている。エチルアルコールの脱水によっても得られるが,工業的には石油ナフサの高温分解によってつくられる。エチルアルコール,塩化ビニル,エチレングリコール,ポリエチレンなどの合成原料として重要で,石油化学工業で最も基本的な原料物質。
→関連項目エチレン系炭化水素植物ホルモン石炭ガス石油化学石油化学工業石油化学コンビナート

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エチレン」の意味・わかりやすい解説

エチレン
ethylene

(1) エテンともいう。エチレン系炭化水素の最も簡単なもの。化学式 CH2=CH2 。無色でかすかに甘い匂いのある引火性の気体で,沸点-104℃。水に難溶,エチルアルコール,エーテルにはいくぶん溶ける。二重結合特有の付加反応を起す。酸化剤によって容易に酸化され,酸化剤の種類によって種々の生成物を生じる。また接触還元によってエタンを生成する。エタンに比べて不安定だが,植物界には広く存在し,ホルモンとして働いている。工業的には石油留分の高温分解によって製造される。石油化学製品のほとんどがエチレンを出発原料にしている。たとえば,重合によるポリエチレン,酸化によるエチレンオキシドの製造,その他エチルアルコール,アセトアルデヒド,酢酸,酢酸ビニル,塩化ビニル,スチレンなど多数の製品が誘導される。 (2) -CH2CH2- で表わされる2価の基。遊離の状態では存在しない。

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栄養・生化学辞典 「エチレン」の解説

エチレン

 C2H4 (mw28.05).CH2=CH2.エチレンガスともいう.アルケンの一種で,常温で気体の不飽和炭化水素であるが,食品科学では,果実の追熟ホルモンで,果実は一般的に収穫後エチレンが増加し,逆にエチレン処理をすると呼吸が増加して追熟が促進される.

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化学辞典 第2版 「エチレン」の解説

エチレン
エチレン
ethylene

[別用語参照]エテン

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世界大百科事典(旧版)内のエチレンの言及

【植物生長調節剤】より

…植物ホルモンの一つであるサイトカイニンの合成同族体,6‐(N‐ベンジル)アミノプリン(ベンジルアデニン,商品名ビーエー)は,ブドウの花ぶるい防止,尻上り防止にジベレリンと混合して使用される。エチレンは最も簡単な化学構造を有する植物ホルモンで,多岐にわたる生理現象の発現に関与していることが知られている。したがって,容易にエチレンを発生する薬剤,例えば2‐クロロエチルホスホン酸(一般名エテホン,商品名エスレル)が,植物生長調節剤として開発された。…

【石油化学工業】より

… このような流れのなかで,1920年スタンダード・オイル社(ニュージャージー)がプロピレンを原料とするイソプロピルアルコール(塗料用溶剤の原料)の生産を開始した。また25年になると,ユニオン・カーバイド社がエチレンを原料として自動車用不凍液に使われるエチレングリコールの生産を始めた。 一方ドイツでは,自国で豊富にとれる石炭の化学的利用法の研究から石油化学工業技術が生まれた。…

※「エチレン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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