塩化カリウム(読み)えんかかりうむ(英語表記)potassium chloride

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩化カリウム
えんかかりうむ
potassium chloride

カリウム塩素の化合物。工業的には塩化カリともよばれる。天然には各種の鉱物、たとえば、シルビンKCl、シルビナイトKCl・NaCl、カーナリットKCl・MgCl2・6H2O、ハルトザルツKCl・NaCl・MgSO4・H2Oとして塩化ナトリウム硫酸カルシウムの層間に産出する。海水中にも平均0.08%含まれている。水溶性鉱物から塩化カリウムを取り出すには連続溶解法か浮遊選鉱法が用いられる。

 一例としてシルビナイトから粗塩化カリウム(含有率60~70%)を製造する工程をに示す。再結晶法によって精製すれば高純度のものが得られる。無色の結晶性物質であるが、天然産には、不純物のために青色や黄赤色を呈するものがある。純粋なものは潮解性はないが、アルカリ土類塩などを含む粗製塩は吸湿性である。苦い辛味があり、水にはかなりよく溶けるが、アルコールやアセトンには溶けない。粗製品はそのまま肥料として用いられる。精製品は各種のカリウム塩の製造原料として重要であり、実験室では緩衝液や電極液の調製に用いられる。単結晶には、赤外線吸収スペクトル測定用のプリズムやセルの窓としての特殊な用途がある。そのほか熱処理剤、写真試薬、医薬にも使われる。

[鳥居泰男]

医薬用

カリウム欠乏症の治療に医薬用の塩化カリウムが使われる。カリウムは生体内でもっとも大量に存在するイオンで、大部分細胞内に含まれており、これが不足すると細胞の機能障害をおこす。このカリウムイオンの補給に塩化カリウムが内服または注射によって投与される。内服では胃障害を避けるために腸溶皮膜を施した徐放性製剤が用いられる。「スローケー」などがそれである。注射では電解質補正用や心臓手術の際の心停止液として輸液に混ぜて使われる。

[幸保文治]



塩化カリウム(データノート)
えんかかりうむでーたのーと

塩化カリウム
KCl
式量74.6
融点770℃
沸点1500℃
比重1.99
結晶系等軸

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化カリウム」の意味・わかりやすい解説

塩化カリウム
えんかカリウム
potassium chloride

化学式 KCl 。天然にはカリ岩塩として,シュタスフルトなどの岩塩鉱床から採取されている。無色結晶。味は塩辛い。比重 1.99,融点 776℃。塩化カリウム 1gは水 2.8ml,熱水 1.8ml,アルコール 250mlに溶解する。エーテル,アセトンに不溶。水への溶解度は塩酸,塩化ナトリウムあるいはマグネシウムにより下げることができる。 15℃における飽和水溶液の比重 1.17,pH約7。写真工業で多く使われ,また緩衝溶液,肥料,工業原料,化学薬品として用途は広い。経口的に大量にとると胃腸を刺激し,下痢を起す。適量用いれば利尿作用を示す。

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