改訂新版 世界大百科事典 「ツクツクホウシ」の意味・わかりやすい解説
ツクツクホウシ
Meimuna opalifera
半翅目セミ科の昆虫。ツクツクボウシともいう。夏の後半に多くなり,日本各地にふつう。小型のセミで,体長26~33mm,前翅の開張76~85mm。体は黒地に暗緑色の斑紋をもつ。頭部は前方に著しく膨らみ,雄の腹弁は三角形でその先端はとがる。雌の産卵管は腹端を超えて突出する。日本では北海道南部から吐噶喇列島悪石島まで分布し,平地~低山地にふつうに見られる。8~9月に出現し,独特なリズミカルな声で鳴く。和名もこの鳴声による。ツクツクホウシ属のセミは日本にはほかに4種が知られ,どの種も姿は似ているが鳴声がまったく違う。九州の佐多岬から沖縄本島にかけての島々にはクロイワツクツクM.kuroiwaeが分布し,8月末~10月にかけて出現し,ゲーッゲーッジュルルル……というゆったりとした声で鳴く。海岸近くのシイ・タブ林には非常に多く,早朝と夕方に大合唱をする。奄美大島,徳之島,沖縄本島,久米島の地質の古い地域には大型のオオシマゼミM.oshimensisがすみ,9~11月に現れ,カンカンカン……というセミとは思われないような声で鳴く。石垣島と西表島にはイワサキゼミM.iwasakiiが知られる。9~11月に出現して,ゲーィカンカラカラ,ゲーィカンカラカラ……とやかましく鳴く。遠くから合唱音を聞くと2種のセミが鳴いているようである。そして,小笠原諸島にはオガサワラゼミM.boninensisが知られる。形,声ともクロイワツクツクによく似ている。小笠原固有ということで天然記念物に指定されている。
→セミ
執筆者:林 正美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報