奄美諸島の南部北側、大島の南西に位置する島。東部に徳之島町、西部北側に
奄美諸島中、大島に次ぐ面積をもつ。その南端は北緯二七度四〇分、北端が二七度五五分付近に当たる。島軸は北―南に延び、約二五キロ、最大幅をもつところで約一二・五キロ、周囲は約八二キロ、面積二四七・九平方キロ。最高点は
年平均気温は摂氏二〇度を超えるが、降水量は意外に少なく、平年値一九二一ミリは日本全体の平年値にほぼ等しい。高い気温と適度な降水量に恵まれ、生物相も多彩である。アマミノクロウサギやケナガネズミはそれぞれ国の特別天然記念物、国指定天然記念物として保護されている。植生についても、ソテツ、アダン、ガジマル、アコウなど奄美諸島で一般的に見られるもののほか、ムシロ瀬とよばれる巨岩・奇岩のある景勝地の海浜植生なども亜熱帯の海岸景観に彩りを添えている。島の周囲の多くが奄美群島国定公園域となっている。
「続日本紀」文武天皇三年(六九九)七月一九日条にみえる「多・夜久・菴美・度感」のうち度感は徳之島とされる。これらの島の人々が律令政府の役人に伴われて渡海し、方物を献上したというもので、位を授けられ、物を与えられている。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
鹿児島県奄美諸島(あまみしょとう)にある島。北緯27度40~55分付近、鹿児島市から約480キロメートルの洋上に位置する。奄美諸島中大島に次ぐ面積の島で、周囲約82キロメートル、面積247.76平方キロメートル。島の最高点は井之川岳(いのかわだけ)の645メートル。鹿児島県大島郡徳之島町、伊仙町(いせんちょう)、天城町(あまぎちょう)の3町からなる。島の基盤地質は古生層で、ほぼ南北走向の山地沿いに古期花崗岩(かこうがん)類、輝緑岩類などの貫入岩体がみられる。島の西部、南部、南東部は広く琉球(りゅうきゅう)層群、いわゆる琉球石灰岩などに覆われ、比較的なだらかな海岸段丘が形成されている。南西部の集落は、この段丘面上に立地するが、乏水地帯であるため散村形態をとる。基幹産業はサトウキビ栽培や大島紬(つむぎ)織の家内工業などが中心であるが、近年肉牛飼育や野菜生産なども活発に行われる。年平均気温は20℃を超え、ガジュマル、アコウ、アダンなどが繁茂する。アマミノクロウサギ(特別天然記念物)の生息地。奄美群島国立公園に属する。平土野(へとの)港、亀徳(かめとく)港には鹿児島市より定期船が毎日寄港する。天城町には空港があり、鹿児島、奄美大島との間に便がある。人口2万3497(2015)。
[塚田公彦 2019年5月21日]
2021年(令和3)、徳之島はユネスコ(国連教育科学文化機関)により「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島(いりおもてじま)」として世界遺産の自然遺産に登録された(世界自然遺産)。
[編集部 2022年1月21日]
鹿児島県大島郡にあり、徳之島の東半分を占める町。1958年(昭和33)亀津(かめつ)町と東天城(ひがしあまぎ)村が合併して徳之島町となる。町の西部は井之川(いのかわ)岳(645メートル)などの山地、海岸は隆起サンゴ礁が発達。亀徳港(かめとくこう)は徳之島の表玄関で、南東部の亀津は町役場のほか、国や県の出先機関が多く、徳之島の行政、経済、交通の中心地である。近世、薩摩(さつま)藩領となり亀津に代官所が置かれ、藩はサトウキビの栽培を強制、現在もサトウキビが基幹作物で農畜産業生産額の3分の1を占める。伝統のある大島紬(つむぎ)の生産も盛んである。闘牛は観光や島民の娯楽の中心となっている。国指定特別天然記念物アマミノクロウサギの生息地である。面積104.92平方キロメートル、人口1万0147(2020)。
[平岡昭利]
『『徳之島町誌』(1970・徳之島町)』
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鹿児島県奄美(あまみ)諸島の一島。面積は248km2で,奄美大島に次ぐ。大島郡徳之島町,天城町,伊仙町の3町に分かれ,人口2万5587(2010)。島は南北に長く,中央部から北部へかけては最高点の井之川岳(645m)を含む古生層の山地が広がり,南部は石灰岩質の平たん地でカルスト地形や鍾乳洞もみられる。集落は隆起サンゴ礁の発達する海岸部に発達,中心は徳之島町の亀津。亜熱帯性の温暖な気候のため,ソテツ,アダンの樹林が茂り,ブーゲンビリアやハイビスカスが咲く。またアマミノクロウサギ(特天)やハブも生息している。
島では近世に薩摩藩の直轄で黒糖や上納品とされた大島紬の生産が行われたが,過酷な藩政に抗する一揆も1816年(文化13)に母間(ぼま),64年(元治1)に犬田布(いぬたぶ)で起こっている。現在は徳之島町母間を中心に大島紬を特産し,島内各地でサトウキビが栽培される。黒糖を原料とする焼酎は名産。ソテツが群生する北部の金見崎,手々(てて)自然公園,西海岸の海食崖の犬の門蓋(いんのじようぶた),犬田布岬,モクマオウの林と白砂の砂丘がつづく南部の喜念浜など奄美群島国定公園に含まれる景勝地が多く,また名物行事の闘牛が島内各地で行われ,近年観光客が急増している。徳之島町亀徳港に鹿児島港から定期船が通じ,天城町に徳之島空港がある。
執筆者:服部 信彦
鹿児島県大島郡,徳之島東部の町。人口1万2090(2010)。井之川岳(645m)など古生層の山地が南北に連なり,沿岸部には標高100~200mの隆起サンゴ礁の海岸段丘が発達する。下層の段丘上または段丘崖下に沿って集落がある。薩摩藩時代に代官所が置かれた中心集落の亀津,その北に鹿児島からの船が発着する亀徳,さらに北方にかつてかやぶき屋根の民家が軒を並べて特異な景観をみせていた母間(ぼま)などの集落があり,島を一周する道路で結ばれている。亜熱帯性気候を生かした農業を営み,サトウキビが農産物生産額の50%(1982)を占める。母間を中心に大島紬を特産する。隆起サンゴ礁の浸食によって形成された奇岩の続く神之嶺崎,奄美大島を望む金見崎などは奄美群島国定公園に属する。
執筆者:赤池 享一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…アフリカのサンにとって黒い雲は雨をもたらすから吉兆と考えられている。 鹿児島県大島郡徳之島においては,人々は正月元旦早朝に起きて,未明の空が明るくなると空をぐるりと見渡して雲のあるところを探し,雲が多く黒雲の出ている方位をその年の恵方とした。この恵方が定まると一家の主人はその方位にある泉に若水をくみにおもむく。…
※「徳之島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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