精選版 日本国語大辞典 「つくつくぼうし」の意味・読み・例文・類語
つくつく‐ぼうし
- 〘 名詞 〙
- ① ( 「つくつくほうし」とも ) カメムシ(半翅)目セミ科の昆虫。はねを含めて体長四、五センチメートルの細形のセミ。体は暗黄緑色で黒斑(こくはん)がある。はねは透明。七月下旬から一〇月初旬頃までみられ、八月下旬に最も多い。「つくつくおーし」と繰り返し鳴く。北海道南部以南、朝鮮、中国、台湾に分布。つくつくし。おおしいつく。くつくつぼうし。つくしこいし。ほうしぜみ。寒蝉。《 季語・秋 》
- [初出の実例]「やのつまにつくつくほうしのなくをききて 我宿のつまはねよくやおもふらんうつくしといふむしぞなくなる」(出典:高遠集(1011‐13頃))
- ② 植物「つくし(土筆)」の異名。
- [初出の実例]「御姫御方へ土筆進了。狂哥相添進了。御ときになれと申てせいひききつくつくほうしまいらせそする」(出典:言経卿記‐文祿三年(1594)正月二六日)
つくつくぼうしの語誌
( 1 )平安時代にはクツクツボウシと呼ばれていたようである。①の挙例「高遠集」によれば、ウツクシとも呼ばれたらしいが、この別名はクツクツの形からは生まれにくく、この当時、既にツクツクという呼び名があったことを示唆する。
( 2 )鎌倉時代になると、ツクツクの形も辞書にのり始め、室町初期には「頓要集」などツクツクの形のみ記したものも登場し、室町後半にはこれが主流となる。
( 3 )ツクツクが主流になると、ツクシヨシという聞き方が現われた。これは「筑紫、良し」ともとられ、さらにツクシコイシという強いイメージの聞きなしまで生み出された。
( 4 )一方ホウシは法師を連想させ、「道心おこしたる、くつくつ法師となくも」〔成尋母集〕の例がある。