化学辞典 第2版 「ツベット」の解説
ツベット
ツベット
Tswett(Tsvet), Mikhail
ロシアの植物学者.イタリアに生まれ,スイスで教育を受けた.ジュネーブ大学を卒業後,1897年ロシアのペテルブルクへ移り,1903年ワルシャワ大学私講師,のちにワルシャワ工科大学で教えた.1917年ユーリエフ(のちタルトゥ)大学教授.1903年にクロロフィルが2種類の色素からなることを見いだし,1906年の論文で詳細を発表.すなわち,炭酸カルシウム粉末などの吸着剤を充填したカラムに緑葉の石油エーテル抽出液を通し,ついで溶媒を流し続けると,β-,α-クロロフィル,および3種類のキサントフィルなどが,それぞれの吸着力の差によって順次下方へ移動し分離された.かれはこの方法を吸着クロマトグラフィーと名づけた.1911年にはカロテノイドの研究を発表.これらの植物色素の同定とその方法は,追試できなかったR. Willstätter(ウィルシュテッター)らから厳しい批判を受け,数十年間世に埋もれていたが,1930年代からR.J. Kuhn(クーン),P. Karrer(カラー)らが利用して広く普及し,その後,ペーパー,ガス,イオン交換,薄層,高性能液体など,さまざまなクロマトグラフィー手法へと発展した.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報