ティルバッルバル(その他表記)Tiruvaḷḷuvar

改訂新版 世界大百科事典 「ティルバッルバル」の意味・わかりやすい解説

ティルバッルバル
Tiruvaḷḷuvar

南インド,タミル文学の代表的古典《クラルKural》の著者。5世紀ころの人。生没年不詳。機織階層出身のジャイナ教徒であったとみられる。《クラル》は1330詩節から成る箴言集で,インド人が掲げる人生の三大目標〈徳〉〈富〉〈愛〉を題名とする3章から構成されている。第1章〈徳〉は,一般の人々が従うべき道徳を述べたもので,女性に比較的高い地位を与えている点に特色がある。第2章〈富〉は,王,大臣など権力者の政治倫理を説いたもので,サンスクリットの政治書と異なり,奸計のない公正な統治を唱導している。第3章〈愛〉は前2章とは趣を変え,男女の愛を抒情的にうたった詩歌から成り,倫理的で清らかな愛の描写力点をおいている。全体を通してジャイナ教的倫理観が底流にうかがえるが,タミル人の伝統的な人生観と美意識を簡潔な二行詩に凝縮して表現した傑作として高く評価され,タミル文化の象徴とみなされている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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