化学辞典 第2版 「テトラオキソ鉄酸塩」の解説
テトラオキソ鉄(Ⅵ)酸塩
テトラオキソテツサンエン
tetraoxoferrate(Ⅵ)
IUPAC命名法(2005年)による正式名称は,テトラオキシド鉄酸塩tetraoxidoferrate(Ⅵ).鉄酸塩といわれる,組成式が鉄のオキソ酸の形式のもののなかで,[FeⅥO4]2- の塩.たとえば,MⅠ2[FeO4],MⅡ[FeO4]など.アルカリ金属,アルカリ土類金属,Ag,Cu,Pb,Co,Niなどの塩が得られている.一般に濃暗赤色の結晶で,室温,乾燥空気中では比較的安定である.加熱すると酸素を発生して分解する.アルカリ金属,アルカリ土類金属の塩は水に可溶であるが,ほかは難溶.強い酸化作用がある.K2[FeO4](198.04)は,KOHの濃水溶液にFe(OH)3をまぜ,これを Cl2 で酸化すると得られる.赤黒色の斜方晶系結晶.Fe-O1.656 Å.常磁性(2.83 μB で d2 配置に相当)で,加熱すると250 ℃ で分解して酸素を放出する.水に易溶.水溶液は濃赤色を呈する.室温でも徐々に分解してFe(OH)3とKOHになる.酸を加えると分解が促進される.NH3を N2 に酸化するほど強い酸化性がある.有機合成で強力な酸化剤として利用される.[CAS 16836-09-6]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報