化学辞典 第2版 「テトラクロロ金酸」の解説
テトラクロロ金(Ⅲ)酸(塩)
テトラクロロキンサンエン
tetrachloroauric(Ⅲ) acid(tetrachloroaurate(Ⅲ))
酸:HAuCl4(339.79).塩化金酸ともいう.金を王水に溶かした液か,塩化金(Ⅲ)の塩酸溶液を蒸発させると得られる.水溶液を蒸発析出させたものはH3OAuCl3・3H2O.黄~黄橙色.潮解性,吸湿性があり,水に易溶であるが加水分解して [AuCl3(OH)]- となる.熱するとAuCl3,AuClを経て,さらに強熱すると Cl2 を発生してAuが残る.日光でも分解する.写真めっき,陶器やガラスの着色,ルビーガラスの製造,アルカロイド試薬などに用いられる.[CAS 14337-12-3].塩:たとえば,Na塩はNa[AuCl4](361.77).金塩ともいわれる.普通は,二水和物.金を王水に溶かして得たHAuCl4溶液にNaClを加えると得られる.二水和物は黄色の斜方晶系結晶で,平面正方形型の [AuCl4]- を含む.Au-Cl約2.28 Å.水に可溶.加熱すると Cl2 を失って,Na[AuCl2]になる.写真(増感など),陶器,ガラスなどの着色,電解金めっき液,ほかの金化合物の製造原料などに用いられる.K塩も類似の性質をもつ塩である.そのほか,アルカリ土類金属,NH4,Co,Niなどの塩も得られている.[CAS 15189-51-2:Na塩]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報