1価および3価の化合物が知られている。二塩化金AuCl2は2価の金を含むものではなく、1価と3価が共存する化合物AuIAuIIICl4であることが知られている。そのほかクロロ金(Ⅲ)酸、通称塩化金酸HAuCl4を塩化金ということもある。
(1)塩化金(Ⅰ)(塩化第一金) 塩化金(Ⅲ)を乾燥塩化水素気流中で分解させて得られる非潮解性の淡黄色結晶。熱すると約170℃で金と塩素に分解する。水、エタノール(エチルアルコール)には溶けずに分解する。塩酸に溶ける。また塩化アルカリの水溶液にはジクロロ金(Ⅰ)酸塩となって溶けるが、しだいに分解する。
(2)塩化金(Ⅲ)(塩化第二金) 微粉状の金を加熱し、塩素を通じて得られる暗赤色針状晶。二水和物AuCl3・2H2O=339.3もあり、これは潮解性のある橙(だいだい)色結晶である。無水和物は塩素気流中で熱すると200℃で昇華する。水によく溶け(100グラムの水に68グラム)、エタノールにもよく溶ける。水溶液は赤褐色で、酸性を示す。めっき、写真、金粉の製造などに用いられる。
[中原勝儼]
塩化金(Ⅰ)
AuCl
式量 232.4
融点 -
沸点 -
比重 7.4(測定温度25℃)
塩化金(Ⅰ),塩化金(Ⅲ)など,いくつかの種類がある。
化学式AuCl。黄色粉末,比重7.4(25℃)。塩化金(Ⅲ)Au2Cl6を160℃に加熱すると得られる。結晶構造は斜方晶系。直線状 -Cl-Au-Cl- 結合をなす。
化学式Au2Cl6。金に塩素ガスを反応させるか,塩化金酸(Ⅰ)を120℃に加熱して得る。赤色結晶であるが,結晶中でも気相においてもほとんど平面構造の二量体として存在している(図参照)。塩素中で,融点288℃(2気圧),200℃で昇華が始まる。空気中で加熱すると塩化金(Ⅰ)に分解する。潮解性が強く,水に溶かすと加水分解するが,とくに塩基を加えると水和酸化物Au2O3・nH2Oを沈殿する。塩酸に溶かすと,平面構造の[AuCl4]⁻を生成する。Au2Cl6,[AuCl4]⁻ともに強い酸化剤で,いずれもAuに還元される。
ほかに化学式Au4Cl8で表される塩化金もある。見かけ上2価の金の化合物のようであるが,実際は3価の金と1価の金とを含む化合物で,図のような構造をしている。ここでAuⅢは平面四角形,AuIは直線構造をとっている。なお俗に塩化金酸を塩化金ということもある。
執筆者:水町 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
【Ⅰ】塩化金(Ⅰ):AuCl(232.42).塩化金(Ⅲ)を160 ℃ で加熱すると得られる.淡黄色の粉末.密度7.4 g cm-3.170 ℃ に加熱すると金と塩素に分解する.水に難溶で水により分解して塩化金(Ⅲ)と金になる.塩酸や塩化アルカリ水溶液には [AuCl2]- の形で溶けるが,不安定で不均化して,Auと [AuCl4]- になる.[CAS 10294-29-8]【Ⅱ】塩化金(Ⅲ):AuCl3(303.33).金粉または金ぱくに200 ℃ 以上で塩素ガスを直接反応させると,褐色の結晶として昇華析出する.H[AuCl4]・4H2Oを120 ℃ に加熱しても得られる.密度3.9 g cm-3.潮解性.水,エタノール,エーテル,希塩酸などに易溶,二硫化炭素に不溶.水溶液中では,
AuCl3 + H2O → H2[AuCl3(O)]
の形で存在し,酸性を呈する.水溶液から結晶させると橙色のAuCl3・2H2Oが得られる.気体では二量体Au2Cl6で存在する.[CAS 13453-07-1]【Ⅲ】一般に,塩化金として市販されているのはテトラクロロ金(Ⅲ)酸四水和物H[AuCl4]・4H2Oである.写真,めっき,インキ,医療品(パッチテスト試薬),陶磁器の装飾,触媒の原料などに用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…正しい化学名はテトラクロロ金酸,俗に塩化金ともいう。4水和物として存在し,化学式[H3O][AuCl4]・3H2O。…
※「塩化金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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