化学辞典 第2版 「デバイの特性温度」の解説
デバイの特性温度
デバイノトクセイオンド
Debye characteristic temperature
固体のモル熱容量に関するデバイの理論で導入した温度で,この温度以下では固体のモル熱容量はデュロン-プティーの法則からはずれる.A. Einstein(アインシュタイン)の理論で,固体のモル熱容量が低温で T 3 法則(Tは絶対温度)に従わないのは振動数νをただ1種類と仮定したためである.低温では固有振動は小さな振動数のものが重要となるので,振動は固体を伝わる弾性波として扱ってよい.振動数がνとν+dνの間にある固有振動の数は,
g(ν)dν = 4πV(cl-3 + 2ct-3)ν 2dν
を与えられる(Vは固体の体積.cl,ct はそれぞれ縦波,横波の速度).この式は,νがあまり大きくないときに正しい.固有振動の総数は自由度 3N(Nは原子の総数)に等しいとすると,最大の振動数 νm が存在する.Einsteinの理論での特性温度 θE に対応して,温度(θD)を定義し,これをデバイの特性温度またはデバイ温度という.
ここで,hはプランク定数,kはボルツマン定数.モル熱容量は,
で与えられ,これをデバイのモル熱容量式という.低温で T 3 法則を与え,しかも温度の全域にわたって固体のモル熱容量をよく説明する.ここで,
で,デバイ関数とよばれる.[別用語参照]アインシュタインの比熱容量式
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報