ボルツマン定数(読み)ぼるつまんていすう(英語表記)Boltzmann constant

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボルツマン定数」の意味・わかりやすい解説

ボルツマン定数
ぼるつまんていすう
Boltzmann constant

オーストリアの物理学者ボルツマンの導入した普遍定数の一つ。理想気体1モルの圧力をp体積V、絶対温度Tとすると、これらの間には状態方程式pVRTが成り立つ。比例定数R気体定数とよばれるが、これをアボガドロ数(モル分子数)NAで割ったもの
  kR/NA=1.380658×10-23J・K-1
ボルツマン定数という。気体分子の重心運動のエネルギーは

と書かれるが、多数の分子(または1個の分子の長時間)についての平均値(〈 〉で示す)は

となることが知られている。もっと一般に、固体や液体内の原子の不規則な運動についても同じ関係が成り立つ。したがってkTという量は、温度Tの系内の微視的な運動のエネルギーのだいたいの程度を示す量であると考えることができる。このため、kTは統計分布の式(フェルミ‐ディラック統計、ボース‐アインシュタイン統計、マクスウェルボルツマン統計)において重要な役割を果たす。また、ボルツマンの墓に刻まれているので有名な、エントロピーの式SklogWにもボルツマン定数が出てくる。

[小出昭一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボルツマン定数」の意味・わかりやすい解説

ボルツマン定数
ボルツマンていすう
Boltzmann constant

分子 1個あたりの気体定数。すなわち気体定数をアボガドロ定数で割った普遍定数記号k ,値は 1.379553×10-23J/Kである。熱運動の平均の運動エネルギーは,温度が 1K増すごとに分子 1個の 1自由度あたり k/2 ずつ増す。統計的考察から状態確率 W熱力学エントロピー S との間に Sk log W という関係式を導びき,統計力学の基礎を築いたルートウィヒ・エドゥアルト・ボルツマンの名にちなむ(→ボルツマンの原理)。

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