改訂新版 世界大百科事典 「データム」の意味・わかりやすい解説
データム
datum
datumはデータdataの単数形であり,また測量における基準面(線,点),位置の決定に用いる基準をいう。機械においてはこの後者の意味を受け,関連する形体の姿勢公差や位置公差などを図面で指示するとき,その公差域を規制するために設定した理論的に正確である理想的な幾何学的基準をデータムという。その基準が点,直線,平面であるとき,それぞれデータム点,データム直線,データム平面と呼ぶ。これが実際に加工された機械部品では,データムを実現した形体なのでデータム形体と呼ばれる。データム形体では加工誤差による形状偏差があるので,ときに高精度の指示が与えられることがある。さらに加工や測定では,このデータム形体をある面に接して,その面をデータム形体に代って用いることが多く,これを実用データム形体という。機械工場の現場で衝(証,正)として用いられてきたものが,分類され定義されたものである。二つのデータム形体によって設定される単一のデータムを共通データムという。また二つ以上の個別のデータムを組み合わせて用いるデータムのグループをデータム系といい,優先順位をつけて用いる。その順位は偏差に影響する。データムを設定するために形体の全表面を用いることができないとき,全表面に代わって限定した点,線あるいは小さい領域をデータムターゲットとして図面に指示することも行われる。
執筆者:沢辺 雅二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報