デーミアン(その他表記)Demian

改訂新版 世界大百科事典 「デーミアン」の意味・わかりやすい解説

デーミアン
Demian

ヘッセ作の小説。1919年刊。主人公の少年シンクレーアが自分自身に目覚めていく過程を描いた作品で,第1次大戦敗戦後混迷するドイツの青年たちに感激をもって迎えられた。少年シンクレーアは級友デーミアンを通じてしだいに暗い無意識界の意義を知り,自己の内面への道を歩む。そしてついにデーミアンの母にいっさいの統一の象徴を見る。第1次大戦に応召して戦傷に倒れ,デーミアンと再会して真の自分自身を見いだす。この作品は戦争という時代の危機と,末子の重病,父の死,妻の精神病など家庭的危機に直面するなかで,精神分析学の手法を借りて内面へ凝集することによって既成の価値観から抜け出ようと試みた意欲作である。初めエーミール・シンクレーアの筆名で発表されたが,まもなく批評家の文体分析によって,作者がヘッセであることを見破られた。この作品がヘッセ自身にとっても再出発を意味していたことを示している。少年期の心理,厳しい求道性,文明批判,万物根源としての母の観念など,ヘッセの前・後期にわたる作品の諸特色がこめられている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のデーミアンの言及

【ヘッセ】より

…このころ家庭的不幸が加わり内外の苦難のためノイローゼに陥って,精神分析の治療を受け,C.G.ユングとも接触した。この経験をもとに《デーミアン》(1919)を書く。この作品以後,従来の抒情性よりも意識的に精神の世界を探求する知的な面を強めていく。…

※「デーミアン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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