改訂新版 世界大百科事典 「トゥランドット」の意味・わかりやすい解説
トゥランドット
Turandot
ペルシアの謎解き婿話に登場する王女の名。〈トゥランの娘〉の意。トゥランドットは,求婚者に三つの謎を出して,それを解けなかった者を死刑にし,解いた者と結婚すると宣言する。多くの若者が挑戦しては失敗して命を落とす。謎の第1-すべての国のもので世界中で愛され,他に類のないものは何か(太陽),第2-自分の子どもたちが成長すると食べる母親は何か(大海と川),第3-12本の枝をもち,どの枝にも30枚の白と黒の葉がある木は何か(年,月,昼,夜)。しまいに賢い若者が謎を解いて結婚する。王女が求婚者に謎を出させ,自分が解けなければその謎の提出者と結婚するという型の話もあり,その型の最古のものは3世紀にまでさかのぼる。トゥランドットの話は17世紀にペルシア語からフランス語に訳されて知られるようになった。謎の内容は多様に変化し,求婚者が旅の途上で経験した毒の肉の効果についての謎がもっともよく知られている。一つが一つを殺し,一つが三つを殺し,三つが十二を殺すのは何か。この謎解き話は前3世紀から後3世紀の間にオリエントで生まれたものと考えられている。《グリム童話集》では22番〈なぞなぞ〉がこれの類話である。日本でも謎解き婿の昔話は難題婿の中の一群として数多く伝えられている。
執筆者:小澤 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報