トユク石窟(読み)トユクせっくつ

改訂新版 世界大百科事典 「トユク石窟」の意味・わかりやすい解説

トユク石窟 (トユクせっくつ)

中国,新疆ウイグル自治区鄯善県にある仏教石窟寺院。中国では吐峪溝(とよくこう)と記す。北方を境する火焰山の一峡谷中にあり,カラ・ホージョ東方に位置する。1898年D.A.クレメンツ,1907年A.グリューンウェーデル,16年M.A.スタインが調査し,A.vonル・コックや大谷探検隊も調査したが,一部が知られるにすぎない。石窟ばかりでなく,断崖空地を利用して,泥煉瓦による寺院も構築された。主堂は平天井に三角持送り構造を彩色で表現し,側室群はボールト天井を架す。残存する仏像キジル石窟のものに近く,猪頭のメダイヨン,ハンサ(ガチョウ)のメダイヨンも知られる。またウイグル文銘辞や漢字の僧名を付した壁画がスタインにより将来された一方,ネストリウス派キリスト教,マニ教関係の樺皮経典や文書がル・コックにより収集され,クチャで出土したのと同式の舎利容器も知られている。大谷探検隊は,元康6年(296)書写の《諸仏要集経》,大暦6年(771)銘絹本〈阿弥陀浄土図〉片などの唐画を収集している。
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