クレメンツ(読み)くれめんつ(英語表記)Frederic Edward Clements

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クレメンツ」の意味・わかりやすい解説

クレメンツ
Clements, Frederic Edward

[生]1874.9.16. ネブラスカリンカーン
[没]1945.7.26. カリフォルニア,サンタバーバラ
アメリカ合衆国の植物学者。父は写真家。ネブラスカ大学出身。同大学教授,ミネソタ大学植物学科主任を経て,カーネギー研究所研究員(1917~41)。その間,植物生態学で数多くの研究成果をあげたが,なかでも遷移理論は重要である。植物群落のなかで優位を占める植物の種類(→優占種)は,時間がたつにつれて移り変っていき,しかもそこに一定の規則性が認められる現象(植物遷移と呼ばれる)の機構に関し,彼は 1916年に次のような理論を立てた。植物は,その土地に生育することを通じて環境に働きかけてこれを改変し,別の種類の植物にとってより好適な環境をつくり上げる。その結果,もとから生えていた植物は種間競争に敗れ,新しい植物にその座を譲る。これの反復が遷移である。遷移理論の意義は,生物と環境の相互作用という概念を,生態学のなかに定着させたことに認められている。彼はまた遷移には終着点があるとみてそれを極相と呼び,極相はその土地の気候のみによって一義的に決定されると主張したが,これに対しては反対意見も多く出され,その妥当性をめぐる論議は生態学の発達刺激を与えた。彼の遷移理論には,植物群落を一つの有機体とみる立場が現れており,のちに動物生態学者のビクター・アーネスト・シェルフォード共同で,植物群落とそこにすむ動物群集とをひとまとめにして有機的な単位とみなすことを提唱し,この単位にバイオームの名を与えた(1927)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クレメンツ」の意味・わかりやすい解説

クレメンツ
くれめんつ
Frederic Edward Clements
(1874―1945)

アメリカの指導的な植物生態学者。ネブラスカ州リンカーンに生まれる。ネブラスカ大学の植物学助教授を経て、植物生理学教授(1894~1907)、ミネソタ大学の植物学教授(1907~1917)、ワシントンのカーネギー研究所員(1917~1941)を歴任した。初期には菌類の分類も研究したが、植生を主研究領域とした。地表を覆う植物集団(群落)を生物個体になぞらえ、それが若年から老年へと変化、発展するという遷移説を確立した。また成体に対応する植生(極相)は、その土地の気候を反映すると考えた。主著に『植物遷移』Plant Succession(1916)、『植物指標』Plant Indicators(1920)がある。

[渋谷寿夫 2018年7月20日]

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