日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラッキング・ストック」の意味・わかりやすい解説
トラッキング・ストック
とらっきんぐすとっく
tracking stock
特定の事業部門や子会社の業績を対象とし、それに連動して株価や配当が上下する株式。特定部門を追跡(トラック)する株式(ストック)という意味でこうよばれる。一般的な分社化(スピンオフ)や子会社上場とは違い、経営権や組織形態を本体から切り離すことなく資金調達できる。アメリカで1984年にゼネラル・モーターズ(GM)が発行したのが第一号で、近年はインターネットやバイオ関連事業などを対象に発行されている。とくに、急成長分野と成長鈍化分野が入り交じった複数の事業部門をもつコングロマリットなどは、急成長分野に絞ったトラッキング・ストックを発行することで、従来より資金調達が容易になる。しかも議決権を外すことができるため、その事業部門の直接の支配権も維持できる。日本では、「子会社連動配当株」ともいい、2001年(平成13)にソニーが子会社のソニーコミュニケーションネットワーク(現ソネットエンタテインメント)を対象に発行したのが第一号である。
[中村 稔]