改訂新版 世界大百科事典 「トリコデスミウム」の意味・わかりやすい解説
トリコデスミウム
Trichodesmium
海洋でプランクトン生活をする糸状の群体性ラン藻で,しばしば大発生して赤潮をつくる。アイアカシオの和名でも呼ばれる。群体は束状,房状または球状で,基本的にはユレモ属と同じ形態の細胞糸が集合してできている。熱帯および亜熱帯の海によく繁殖し,赤潮は黒潮に乗って日本近海に達することがある。インド洋から地中海に向かってのびる紅海Red Seaの名は,このラン藻が大量に発生して海が紅色を呈したことに由来するという。日本近海のトリコデスミウム属には2種が知られ,T.erythraeum Gomontは細胞糸が平行に並んで群体をつくるのに対し,T.thiebautii Gomontは細胞糸がねじれるように互いにからみ合うか,または放射状に並んで群体をつくる。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報