改訂新版 世界大百科事典 「ユレモ」の意味・わかりやすい解説
ユレモ
Oscillatoria
分枝のない直径4~60μmの円柱状の糸状ラン藻の1属で,細胞糸はまっすぐかまたはゆるやかに曲がる。周囲に鞘(さや)状の細胞壁構造や粘質物質をもたないことが特徴である。種類数が多く,日本では60余種の生育が知られる。世界各地に分布し,いたるところの湿地や水中に見られる。細胞糸が互いにからみ合って団塊をつくって浮遊生活をするか,または湿土上などにマット状に生育する。細胞糸ははげしくゆれ運動をする性質があり,和名はこのことに由来し,学名も〈振れ動く〉の意である。似た藍藻スピルリナは細胞糸がらせん状に巻くことで,フォルミディウムPhormidiumは細胞糸の周囲に粘質物の鞘をもつこと,リングビアLyngbyaは固い鞘をもつことで,それぞれ区別される。海に生育し,ときどき大繁殖して赤潮を起こすトリコデスミウムの体はユレモと同一構造の細胞糸が多数からみ合ってできている。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報