改訂新版 世界大百科事典 「トーホアイ」の意味・わかりやすい解説
トー・ホアイ
To Hoai
生没年:1920-
ベトナムの小説家。本名グエン・センNguyen Sen。ハノイ近郊のハドン省に生まれ,青年時代から教師や労働者,職人などを経験しながら文学を志した。童話《キリギリスの漂流記》(1941)が好評を博したあと,貧困と失業のため生れ故郷の村を捨てて放浪する機織職人や農民の生活を書いた《他郷》(1942)で,作家として認められた。早くから抗仏独立運動に関係し,1938年民主戦線運動に加わって機織職人愛友会の書記となり,43年以後共産党の救国文化会で活動し,45年の八月革命を経て46年に共産党員となった。インドシナ戦争中は西北少数民族地区で抗戦任務につき,54年,その体験に基づいてタイ族やミヤオ族などの抵抗を描いた《西北物語》三部作で文芸大賞を受賞した。現代ベトナム文学を代表する作家として国際的にも知られ,そのほかの代表作に《十年》(1958)がある。
執筆者:川本 邦衛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報