改訂新版 世界大百科事典 「ドゥクン」の意味・わかりやすい解説
ドゥクン
dukun
インドネシア,ジャワの専門的呪者,祈禱者の漠然とした総称で,実態はさまざまの機能に分化している。呪医ドゥクン・ジャンピ,産婆ドゥクン・バイなどは最もよく目につき,人々の暮しに欠かせない存在である。一方,これらと重なり合って,なんらかの秘術を身につけ,未来や人の運勢を予知したり,人の身の上に呪的影響を及ぼすと信じられている各種のドゥクンがいる。その用いる知識や術は,土着的なものに加えて,ヒンドゥーやイスラムの神秘主義的要素が混合した雑多なものである。ごく素朴な民間呪者的なものと,より練磨された神秘主義諸サークルの師との境界はしばしばあいまいで,絶対的区別は難しい。現代のジャワでは,ドゥクンという語に遅れた迷信というネガティブな評価がつきまとうことも多く,神秘主義の師を自任する民間呪者をドゥクンと呼ぶことは,無礼な非難・中傷と解されがちである。
執筆者:関本 照夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報