運命の進み方。人のもって生まれた運命。運・不運の巡り合わせ。中国では古くから、自然の理法を「天」とし、人事もまた天の命(天命)によって定まるという考え方があった。それが陰陽(いんよう)説や五行(ごぎょう)説によって補強され、種々の思想と結び付いて複雑さを加えた。日本でもその考え方や判断技術を受け入れ、初めは国家権力と結び付いていたが、しだいに信頼性が薄れ、下級の神人や陰陽師(おんみょうじ)たちが各地を放浪して生活の手段とするとともに、広く知識を伝播(でんぱ)することになった。
運勢や運命を推測し、判断しようとする技術が卜占(ぼくせん)(占い)である。それには、売卜者による運命鑑定や運勢判断と、一般人の行う占いとがあるが、区別しにくい場合もある。判断の元になる場面は、(1)天体の運行や自然現象など人力を超えたものの場合、(2)生年月日や、手相、人相、ほくろなど生得的な体の特徴などの場合、(3)夢のように、意図的ではないにしても、まったくの無意識ともいいきれない場合、(4)さいころ、くじ、年占など、判断の場面を人が設ける場合などがあり、またそれらを組み合わせて判断の材料にする。判断そのものについては、手相、筮竹(ぜいちく)などのように、あらかじめいちおうの基準があって当てはめるもの、さいころ、くじなどまったくの偶然に任せるもの、持ち上げて重く感じるか軽く感じるかという重軽石(おもかるいし)など、判断の基準がさだかでないものなどがある。夢の場合でも、悪い夢だと逆夢として、判断を都合よく解釈したりすることがある。
人はだれも未来を正確に予知することができないから、以上の手段もすべて気休めにすぎないが、人によっては、そのために心の安定を得られる場合もあろう。現代は科学万能の時代であり、また自分の未来は、自らの努力と判断によって切り開かなければならない。しかし科学によっても未解決の部分は多く残されており、また人間は弱い存在であるために、判断を超人間的な力に求めたり、偶然にゆだねる傾向はいまも衰えていない。むしろ社会生活が複雑になるにつれて、運勢判断や占いの方法は多様化した。ただ、運勢判断に対する信頼度は、時とともに薄らいで、単なるジンクスや遊びの要素が濃くなってきた。それよりも、かつてはこのようなことが信じられてきたということが、歴史的、社会的、心理的な事実であり、それを分析することによって、民族文化や人類文化を解明するための、重要な手掛りとなるはずである。
[井之口章次]
出典 占い学校 アカデメイア・カレッジ占い用語集について 情報
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