知恵蔵 「ドナルド・トランプ」の解説
ドナルド・トランプ
15年9月現在、共和党では17人以上が立候補を表明しているが、移民や外交問題、他候補への歯に衣着せぬ発言が支持を集めている。6月以来、有力候補の元フロリダ州知事、ジェブ・ブッシュらを抑え、世論調査でトップを守り続けている。15年9月初めの調査では、共和党支持者を対象にした支持率は30%に達した。
父親は中間層向けの不動産開発業を営んでいたドイツ系米国人、母親はスコットランド生まれで米国に帰化しており、5人きょうだいの1人として生まれた。13歳でニューヨーク・ミリタリー・アカデミーに入り、卒業後はフォーダム大学に入学、2年生の時に著名なビジネススクールであるペンシルバニア大学ウォートン校に編入。経済学の学位を取り、68年に卒業した。
学生時代から父親の不動産会社を手伝い、卒業後に入社、経営手腕を発揮して中間層向けの事業を、上流層向けの不動産や高級ホテルなどへと発展させていった。80年代の不動産ブームに乗り、高級ブランドショップが立ち並ぶニューヨーク・マンハッタンの五番街に高層ビル「トランプ・タワー」を建設、カジノやホテル経営などにも手を広げた。90年代の不動産ブームの収束により、子会社が経営破綻(はたん)するなどして多額の借金を抱えたが、その後は持ち直している。
メディアへの露出にも積極的で、90年代から「ミス・アメリカ」コンテストに共同事業者として参加。テレビ番組にも司会者などとして出演し、2004年から放送が開始された出演者がトランプの企業でのポストを争う実録番組「アプレンティス」で、出演者をふるい落とす際の「お前はクビだ」という台詞は全米で流行語となった。
これまでにも米大統領選への立候補をほのめかしてきたが、正式には表明していなかった。「MAKE AMERICA GREAT AGAIN!(米国を再び偉大な国に!)」をスローガンに掲げ、15年6月に立候補を表明してからは、メキシコからの不法移民を「麻薬と犯罪を持ち込む強姦(ごうかん)者だ」と決めつけ、他候補の携帯電話番号を暴露するなど、過激な言動や姿勢が目立つ。日本や中国への非難も激しく、「日本が攻撃されれば米国は助けなければならない。だが、我々が攻撃されても日本は助ける必要がない。日米安保条約は不公平だ」などと発言している。出馬表明前の5月の世論調査では支持率3%で、米国メディアからは泡沫(ほうまつ)候補扱いだったが、これらの強硬な発言が現政権に不満を持つ白人中間層など保守派に歓迎され、支持を伸ばしている。
女性関係は華やかで、3人目となる現在の妻は24歳年下で元モデル。15年9月時点で、元妻との間も含めて計5人の子ども、7人の孫がいる。
(南 文枝 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報