日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドハーティ」の意味・わかりやすい解説
ドハーティ
どはーてぃ
Peter C. Doherty
(1940― )
オーストラリアの免疫学者、病理学者。クイーンズランド大学で獣医学を学び1962年卒業、1966年同大学で獣医学修士号を取得。病理学に専攻をかえイギリスのエジンバラ大学で1970年に博士号を取得。1972年よりオーストラリア国立大学でR・ツィンカーナーゲルと、細胞性免疫を担うTリンパ球(T細胞)が、ウイルスに感染した細胞を認識する機構を共同研究。1975年ペンシルベニアのウィスター研究所に移る。1982年オーストラリア国立大学実験病理学教授。1988年より聖ジュード小児研究病院免疫学部長となる。
Tリンパ球は、感染した細胞膜表面に提示された抗原(ウイルスの一部)と自己の細胞である証(あかし)となる主要組織適合遺伝子複合体(MHC:major histocompatibility complex)を同時に認識し、それを攻撃していることを明らかにした。これにより、免疫システムについて理解が進むとともに、自己免疫疾患をはじめとする疾患の原因解明にもつながった。これらの功績により、ツィンカーナーゲルとともに1996年のノーベル医学生理学賞を受賞した。
[馬場錬成]