改訂新版 世界大百科事典 「ナンキョクブナ」の意味・わかりやすい解説
ナンキョクブナ
Nothofagus
ブナによく似た実をつけるブナ科の1属。南半球の熱帯の山地(まれに低地)から亜寒帯まで分布し,きわめて多様な環境に,常緑から落葉,高木から矮性(わいせい)木と多様な種が分化している。葉は互生し,楯状につく托葉がある。雌雄同株または異株。雄花は葉腋(ようえき)に単生するか,小さい花序をなし,花被に包まれた多数のおしべを有する。雌花は葉腋に1~3花が集まってつき,全体が殻斗に包まれる。果実は堅果で,ブナのような三角のものと扁平またはレンズ状のものとがある。ニューギニア,ニューカレドニア,オーストラリア東部,タスマニア,ニュージーランド,南アメリカ大陸南部に約60種がある。南極大陸からは化石が見つかっているが,現在は生育していない。ブナ科の植物は北半球では7属が多数の種を分化し,温帯・熱帯山地の森林の主要樹種となっているが,オーストラリア以南にはこの属だけしかない。
執筆者:岡本 素治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報