ブナ(その他表記)Siebold's beech
Fagus crenata Bl.

デジタル大辞泉 「ブナ」の意味・読み・例文・類語

ブナ(〈ドイツ〉Buna)

ドイツブタジエン合成ゴムの商標名。

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精選版 日本国語大辞典 「ブナ」の意味・読み・例文・類語

ブナ

  1. ( Buna ) ドイツでつくられる一連の合成ゴムにつけられる商標名。ブナN(ブタジエンアクリロニトリルゴム)、ブナS(ブタジエンスチレンゴム)などがある。いずれもブタジエンを主体としているため、総称としてブナゴムということがある。

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改訂新版 世界大百科事典 「ブナ」の意味・わかりやすい解説

ブナ (橅/椈)
Siebold's beech
Fagus crenata Bl.

別名シロブナ。ブナ科の落葉高木で,日本の温帯落葉樹林を代表する。したがって,この森林帯をブナ帯ともいう。高さ25m,径1.5mに達し,樹幹は比較的通直である。樹皮は滑らかで灰白色を呈し,地衣が種々の模様をつくる。葉は褐色の当年生枝に互生し,卵形ないしひし卵形で,長さ4~9cm。縁は波打ち,脈上にわずかに長毛が残る。5月新枝とともに開花し,雄花序は新枝の下部葉腋(ようえき)から長い柄で垂れ,雌花序は枝の中部の葉腋から出る。花は淡黄緑色で,総苞に包まれ,雄花序は6~15個,雌花序は2個の花からなる。秋に1cmほどの柄で,長さ2cmほどの殻斗果が立ち,殻斗(総苞)は4裂して,2個の堅果を出す。堅果に3本の稜角(そば)があるので,ブナをまたソバグリともいう。北海道渡島(おしま)半島から鹿児島県高隈山まで分布し,温帯山地の湿潤肥沃な土壌のところにはえ,しばしばみごとな純林をなす。日本の広葉樹のうちで最も蓄積が多いが,淡紅褐色の材が緻密(ちみつ)で木目が細かく加工性も割合によいため,器具,家具,合板,曲木(まげぎ),パルプあるいはまくら木用として良材が大量に切られてしまった。また,生材は伐採後まもなく青変菌におかされ,変質,変色するので,貯木場では散水して防除する。また,堅果は食用あるいは豚などの飼料となる。このため,属名Fagusはギリシア語のphagein(食べる)を語源としている。イヌブナ(別名クロブナ)F.japonica Maxim.(英名Japanese beech)は樹皮が暗灰色であり,葉の裏に白色の絹毛が残り,殻斗が堅果より短く,その柄が3~4cmと細長い。岩手県から熊本県南部までの太平洋側に多く分布し,ブナよりやや低標高にはえる。ブナ属は北半球の温帯に約10種があり,大部分は東アジアに分布するが,ヨーロッパからカフカスにはヨーロッパブナF.sylvatica L.(英名beech,European beech)が分布する。紅葉が美しく,とくに中部ヨーロッパの都市林を彩る。中には葉が暗紫色のものや枝垂れ(しだれ)のものもある。北アメリカ東部にはアメリカブナF.grandifolia Ehrh.(英名American beech)が分布し,ともに造園樹に利用される。
執筆者:

ブナは古くは供犠の木で,ほふられた動物の頭蓋骨や皮がそれにかけられたり,その葉ずれの音から未来を占ったという。神聖なブナの木が身を開いて,敵に追われた聖人を隠して救ったり,苦悩する聖母マリアの姿を現して教会建立の縁起となったりするキリスト教伝説の多いのも,古くからこの木が崇拝されたなごりであろう。タキトゥスの《ゲルマニア》には,くじ占いにブナの枝を切って使う話が出ている。また古いブナの幹の穴くぐりをすると病気が治るという,奈良の東大寺の円柱の穴くぐりを思わせる習俗がドイツにもある。南ドイツでは穀物商人がブナの木の芽の出し方で景気を占い,農民は収穫や天候を占った。さらに,ブナの実がたくさんできると私生児もたくさん生まれるといい,ブナの木のたらいで湯あみした女の子は長じて男狂いするといわれるのも,古くはブナの実から供犠のパンを作ったり,人間や家畜がその実を食べていたため,豊饒(ほうじよう)儀礼と関係するのであろう。
執筆者:

双子葉植物。コナラシイクリなどを含み,8属約700種を有する。木本で熱帯山地から温帯まで広く分布する。果実は堅果で,どんぐりの皿やクリのいがで示されるような特徴的な殻斗をもつ。葉は単葉で互生し,ごくまれに輪生する。托葉がある。花は小さく単性花で,単独では目だたないが,クリのように花序全体としては目だつものもある。雄花は萼様の花被とおしべからなり,花弁はない。多くは細い軸上に多数並んで尾状花序となり,風媒のものでは下垂,虫媒のものでは直立する。雌花も花弁はなく,萼に囲まれてめしべがある。子房は下位で通常は3室,各室に2胚珠がある。雌花序は雄花序に比べて短いことが多く,単生花となることもある。果実は堅果で,1種子がある。胚乳はなく,厚いかまたは折りたたまれた子葉に養分をためる。ブナ科の果実は殻斗に包まれることが際だった特徴である。殻斗は,基本的には果実の柄の部分が,その果実を包むように発達したものとみることができるが,それだけでなく,花序の高次の枝に相当する部分も殻斗形成に参加している。マテバシイ属やコナラ属の殻斗は,果実を1個ずつ包んでいる。これは果柄の発達に由来する基本的な殻斗と考えられる。クリ属などでは,3個の果実が一つの殻斗に包まれていて,熟すと四つに割れる。このとげの生えた四つの殻斗片は,花序の高次の枝に相当する部分と思われる。ブナ科の殻斗と相同と考えられるものは,近縁な植物群の中では知られていない。ブナ科の中で起源し発達した構造である。若い果実を乾燥,食害などから保護しているものと考えられる。カバノキ科に近縁であり,バラノプス科とも外見で似ている面があるが,真の類縁関係を示すものかどうかは疑問である。温帯域の森林を構成する優占的な樹木で,大木となるものが多い。材は硬くてじょうぶなものが多いので,有用材としてさまざまな用途に使われる。景観,環境保全の面からも,単木であるいは森林として貴重な存在である。果実は食用となり,とくにクリは重要な果樹である。
執筆者:



ブナ
Buna

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブナ」の意味・わかりやすい解説

ブナ
ぶな / 橅

[学] Fagus crenata Bl.

ブナ科(APG分類:ブナ科)ブナ属の落葉高木。高さ20メートル以上、直径1メートルにも達する。樹皮は灰白色で平滑であるが、地衣類がつきやすくさまざまな斑紋(はんもん)をつくる。葉は左右不対称の卵形から菱(ひし)形で、縁(へり)は波状の鋸歯(きょし)がある。側脈は7~11対で、先端は上部へ流れる。花は新葉よりすこし早く開く。雌花は新枝の上部の葉腋(ようえき)につき、緑色の総包内に、赤紫色の柱頭をもつ2個の花をつける。雄花は新枝の下部につき、細い柄をもつ頭状花序を下垂し、黄色の葯(やく)が割れ大量の花粉を放出する。風媒花で、雌性先熟である。一雌花内には三つの子房と六つの胚珠(はいしゅ)があるが、一胚珠だけが成長して殻斗(かくと)内に二堅果を結ぶ。秋、黄葉に先だって成熟する。堅果は褐色で三稜(りょう)のある卵形なので、ソバの実にたとえてソバグリともいう。隔年結果の性質が強く、豊作は6~7年に1回程度と少ない。堅果はシギゾウムシの食害や粃(しいな)が多く、落下後の乾燥にもきわめて弱いことから、天然更新上の一つの障害になっている。ほかのブナ科の種は、発芽のときに地下に種子が残る地下子葉型であるが、ブナだけは双葉が地上に出る特性をもつ。北海道渡島(おしま)半島の尻別(しりべつ)川流域を北限とし、鹿児島県高隈(たかくま)山まで分布する。温帯林の肥沃(ひよく)な土地の優占種となり、いわゆるブナ帯を形成する。とくに多雪な日本海型気候下では他種との競争に強く、近年の伐採を免れた美林が残存する。材は人工乾燥と防腐の技術により、最近では家具材やフロアリングのベニヤ板などとして重要となっている。

 ブナ属には、日本産のイヌブナのほか、ヨーロッパブナ、アメリカブナ、タイワンブナなど10種以上知られている。かつてヨーロッパ文明をはぐくみ、「森の母」と尊ばれたブナの広大な自然林も、今日では牧畜や農耕や植林のため、その大半が失われてしまった。

[萩原信介 2020年1月21日]

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百科事典マイペディア 「ブナ」の意味・わかりやすい解説

ブナ

ブナ科の落葉高木。北海道(渡島半島)〜九州(鹿児島県高隈山)に分布し,湿潤で肥沃な山地にはえる。大きいものでは高さ30m,径1.5mに達する。樹皮は灰白色で,灰黒色の樹皮をもつイヌブナに対してシロブナとも呼ばれる。葉は広卵形で先はとがり,縁には波状の鋸歯(きょし)がある。雌雄同株。5月,黄色の花を開く。雄花穂は新枝の下部から長い柄で尾状にたれ下がり,雌花穂は上部につく。果実は柔らかいとげのある総包に包まれ,10月に熟して4裂,中には2個の堅果がある。材を建築,器具,土木用材,パルプなどとする。ブナの林は日本の温帯地域で最も発達した林(極相林)をなし,この森林帯はブナ帯ともいわれる。近年,伐採が進み,残存する林の保護が問題となっている。青森・秋田県境の白神山地のブナ林は1993年世界遺産に登録された。近縁のイヌブナは葉が薄く,裏は絹毛があって白っぽい。本州(岩手県以南)〜九州(熊本県以北)に分布。ブナの多い東北・北陸地方の多雪地帯にはほとんどみられない。
→関連項目指標植物

ブナ

ドイツのIG(イーゲー)ファルベンのブタジエン合成ゴムの商品名。ブタジエンと重合に用いた触媒のナトリウムとの合成語。ブタジエンの重合体である数字ブナ(ブナ32,ブナ85,ブナ115)とブナS,ブナNなどの共重合体がある。

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化学辞典 第2版 「ブナ」の解説

ブナ
ブナ
Buna

1930年ごろよりドイツのIG社により世界ではじめて工業化された合成ゴムの総称.ナトリウムを触媒としたブタジエン-ジビニルベンゼンの共重合体であるブナ-85,ブナ-115(のちに生産停止)をはじめとし,乳化重合法によるブナS,ブナNなどがつくられた.後者はそれぞれスチレン-ブタジエンゴム(SBR),アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)に相当する.第二次世界大戦後,ドイツのHühls社がこれらを受けつぎ,それぞれペルブナン(Perbunan)SおよびNと改称されている.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブナ」の意味・わかりやすい解説

ブナ
Fagus crenata; beech

山毛欅とも書く。ブナ科の落葉高木。ブナノキ,ソバグリなどともいう。日本特産の樹木の1つで,本州中部の山地では標高 1000~1500m付近のいわゆるブナ帯の落葉広葉樹林を構成し,温帯林を代表する樹木の1つである。樹高 20~30m,胸高直径 1.7mに達するものもあり上部ではよく分枝して大きな樹冠をつくる。樹皮は灰色で平滑。葉は長さ6~10cmの広卵形ないし楕円形で光沢があり,縁は波状になる傾向がある。側脈は7~11対で,上面は初め毛があるがのちに無毛となり下面の脈上だけに毛が残る。雌雄同株。春に,新枝の葉腋に尾状花序をなして多数の雄花がつき,雌花は葉腋に通常2個ずつつく。果実は3稜形の堅果。材はパルプ材,家具材などに利用される。

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リフォーム用語集 「ブナ」の解説

ブナ

ブナ科ブナ属の木。落葉広葉樹で、温帯性落葉広葉樹林の主要構成種。英名はJapanese Beech。白っぽい色で粘りがあるが、柔らかく狂いやすく変色もしやすい。そのため、建材としては適さないが、曲木には最も適した材として、椅子やテーブルといった家具やインテリアには多く使われている。

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世界大百科事典(旧版)内のブナの言及

【合成ゴム】より

…合成ゴムの原料としてイソプレン,ブタジエン,ジメチルブタジエンなどの適否が検討された結果,ブタジエンが最も有望であるとされ,その合成法,重合法が研究された。ドイツのイーゲー・ファルベン社ではブタジエン(Butadien)をナトリウム(Natrium)触媒で重合させて合成ゴムを得たことからブタジエン系合成ゴムをブナBunaとよび,その後,重合法が変わってナトリウム触媒を用いない乳化重合法になっても,ブタジエンとスチレンの共重合ゴムをブナS,ブタジエンとアクリロニトリルの共重合ゴムをブナNなどと同様の名称でよんだ。33年にはドイツにナチ政権が成立し,ブナゴムの工業生産が強力に推進され,35年には月産25t,43年には年産1万1000tものブナSが生産されるようになった。…

【森】より

…というのは,P.C.タキトゥスが〈森林に覆われうす気味の悪い〉と伝える中部ヨーロッパは,民族大移動の時代以来,森林面積が約1/3に減ったと推定されるからであり,しかも開墾のおもな対象となったのは,山地および高緯度の針葉樹林ではなく,肥沃な平地の広葉樹林帯だったからである。例えば東ヨーロッパに現在比較的残されているオークとブナ類(シデなど)の混交林は,かつては北ドイツ,デンマーク,ベルギー,イギリスといった,今日比較的森林に乏しい地域にまで広がっていたのだが,今ではすっかり姿を消し,ヨーロッパアカマツがかろうじてその代役を務めている。カバノキ,トネリコ,ポプラ,ときにはオークとすら混交林をなすほど適応性の強いヨーロッパアカマツは,かつてのヨーロッパの代表的樹木ヨーロッパブナにかわって,今日ヨーロッパで最も広範囲に見られる樹種である。…

※「ブナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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