ナースティカ(読み)なーすてぃか(英語表記)nāstika

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナースティカ」の意味・わかりやすい解説

ナースティカ
なーすてぃか
nāstika

インド哲学用語インドの非正統派に対して正統派が投げかけた呼称で、アースティカ反対。「虚無主義者」「異端」などと訳される。このことばは、語源的には「存在しないna astiと主張する者」のことであるが、一般には、ベーダ権威と認めず、ベーダが命ずる祭式を行わず、またしたがって、その祭式によって保証される栄光来世(生天)は「存在しない」と主張する者であると解されている。具体的には、唯物論者仏教徒ジャイナ教徒がその代表であるとされる。ただし、軽蔑(けいべつ)の対象であったとはいえ、長い歴史のなかで、正統派がナースティカを暴力的に圧殺したという例はほとんどない。

[宮元啓一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナースティカ」の意味・わかりやすい解説

ナースティカ
nāstika

インド哲学用語。非実在論者,虚無論者の意。実在論者 āstikaの対。インド哲学において,ベーダ聖典の絶対的真実性を信じ,自説をベーダによって根拠づける正統バラモン諸哲学派の立場から,仏教,ジャイナ教,唯物論などの異端説を呼称する語。

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世界大百科事典(旧版)内のナースティカの言及

【アースティカ】より

…ベーダ聖典の権威とバラモン階級の優位性を認める正統的なインド思想家に対する呼称。一方,ベーダ聖典の権威を否定した非バラモン系統の異端派は,〈ナースティカnāstika〉と呼ばれている。これはバラモンの側から下された分類で,〈ナースティカ〉とは〈虚無論者〉〈無神論者〉などという意味をもつ貶称である。…

【唯物論】より

…このアジタをはじめとして,霊魂(自我)は身体にほかならないという説を唱えた人々は,ローカーヤタ(順世派という)とか,チャールバーカと呼ばれた。当然,彼らはベーダの権威を認めず,したがってベーダが規定する祭式も,社会的義務も,また来世も認めなかったため,正統バラモン教の側からは,ナースティカ(虚無主義者)の最たるものとして蔑視された。観念論唯心論【宮元 啓一】。…

※「ナースティカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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