改訂新版 世界大百科事典 「ニオブタンタル鉱物」の意味・わかりやすい解説
ニオブ・タンタル鉱物 (ニオブタンタルこうぶつ)
niobium and tantalum mineral
ニオブNbとタンタルTaを主成分として含む鉱物。ニオブとタンタルは性質が酷似していて,天然には常に両者相伴って存在する。フェルグソン石fergusonite ABO4,ユークセン石euxeniteAB2O6(斜方晶系,比重約5),サマルスキー石samarskite(化学式はAB2O6とABO4の中間の組成で,どちらもA+Bの数がOの数の1/2である。結晶中で次のAとBの元素が互いに入れかわりうるため,一つの化学式で示しにくい。斜方晶系,比重5~6)などがあり,他に複雑な組成の酸化物鉱物が多数知られている。ここでAは希土類元素で,とくにイットリウムYおよび重希土類元素,ウランU,カルシウムCa,鉄Feなど,BはニオブNb,タンタルTa,チタンTiなど,Oは酸素である。含有する放射性元素の放射能により,格子がくずれて光学的,X線的に無定形になった状態で産することが多く,化学分析も難しいので,不明の点が多く残っている鉱物種も多い。コロンブ石columbite(Fe,Mn)(Ta,Nb)2O6(Nb>Ta)とタンタル石tantalite(Fe,Mn)(Ta,Nb)2O6(Ta>Nb。斜方晶系,比重8)は固溶体系列をつくって花コウ岩ペグマタイトおよび漂砂鉱床に産し,タンタルとニオブの重要な鉱石である。ニオブはこのほか炭酸塩岩中のパイロクロアpyrochlore(Na,Ca)2Nb2O6(OH,F)が重要な鉱石鉱物である。タンタルはブラジル,カナダ,タイが,ニオブはブラジル,カナダが主要産出国である。日本でも,各地の花コウ岩ペグマタイトにニオブ・タンタル鉱物の産出が知られているが,その量はきわめてわずかである。
執筆者:長島 弘三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報