日本大百科全書(ニッポニカ) 「タンタル」の意味・わかりやすい解説
タンタル
たんたる
tantalum
周期表第5族に属し、バナジウム族元素の一つ。原子番号73、元素記号Ta。1802年スウェーデンのエーケベリがフィンランドおよびスウェーデンでみつけられた鉱石(タンタル石)の中から発見し、その反応が複雑で確認に苦労し、また、その酸化物が酸に侵されないところから、ギリシア神話のタンタロスにちなんで命名された。つねにニオブと共存する希元素である。鉱石からアルカリ融解でタンタル酸塩として抽出し、フルオリド錯塩に変えて分別結晶を行い、随伴するニオブと分離、融解塩の電解還元によって単体の金属を得る。白金に似た外観を呈し、展延性があり、耐力性、耐食性に富むが、展延性は不純物の混入によって著しく阻害される。水素の吸蔵力が大きく、暗赤色に加熱した状態で740倍の体積の水素ガスを吸蔵するが、これを真空中で加熱すると75%だけが放出され、残りはタンタルの水素化物となる。フッ化水素酸以外の酸に侵されないため、化学工業用耐酸材料に使われ、電子材料、合金材料などの用途もある。酸化数+Ⅴの化合物が一般に安定であるが、+Ⅳ、+Ⅲ、+Ⅱの化合物も知られている。Ta6Cl14・7H2Oのようなクラスター化合物、[(NH4)x(NH3)n](TaS2)のような層間化合物などの特殊な化合物もある。
[岩本振武]