ニオブ(読み)におぶ(英語表記)niobium

翻訳|niobium

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニオブ」の意味・わかりやすい解説

ニオブ
におぶ
niobium

周期表第5族に属し、バナジウム族元素の一つ。原子番号41、元素記号Nb。同族タンタルとつねに随伴するため、タンタル命名のもととなったギリシア神話タンタロスの娘ニオベNiobeから命名された。アメリカのコネティカット州で採集され、大英博物館に陳列されていたコルンブ石columbiteからイギリスのハチェットCharles Hatchett(1765―1847)によって1801年に発見され、コロンビウムcolumbiumともよばれた。当時、コロンビウム、ニオブ、タンタルの三者は混同されることが多かったが、ドイツのローゼHeinrich Rose(1795―1864)がコルンブ石からタンタルとともに単離し命名した(1844)。のちにコロンビウムとニオブが同一元素であることが認められ、ニオブの名が1949年に至って国際的に確定された。現在でもアメリカではコロンビウムの名が用いられることもある。

 天然にはコルンブ石(Fe,Mn)(Nb,Ta)2O6のような複酸化物として産出する。鉱石を砕いてフッ化水素酸で分解し、溶媒抽出法によって分離精製して高純度の酸化物を得、酸化物の炭素還元あるいは塩化物のナトリウム還元で鋼灰色の単体金属を得る。低温度でも延・展性に富むが、機械的性質は不純物に影響され、とくに水素を吸収するともろくなる。室温ではフッ素、フッ化水素酸以外には溶解しない。耐食性あるいは耐熱性合金材料として重要な希金属の一つである。

 ニオブの化合物は、一般にタンタル化合物に似ている。酸化数+Ⅴの化合物が一般に安定であるが、+Ⅱ、+Ⅲ、+Ⅳの化合物も知られている。+Ⅴの酸化物は他の塩基性酸化物と複酸化物をつくるが、それらは一般にニオブ酸塩niobateと称されている。ニオブ酸リチウムLiNbO3、五ニオブ酸二バリウムナトリウムBa2NaNb5O15(俗称バナナ)などは電気・光学的に特徴のある材料として電子・光学製品の重要な素子に利用されている。

[岩本振武]



ニオブ(データノート)
におぶでーたのーと

ニオブ
 元素記号  Nb
 原子番号  41
 原子量   92.90638
 融点    2470℃
 沸点    4700℃
 比重    8.56(25℃)
 結晶系   立方
 元素存在度 宇宙 (Si 106個当りの原子数)
          1.15(第51位)
       地殻 20ppm(第31位)
       海水 10×10-3μg/dm3

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニオブ」の意味・わかりやすい解説

ニオブ
niobium

元素記号 Nb ,原子番号 41,原子量 92.90638。周期表5族,バナジウム族元素の1つ。天然にはニオブ石,コルンブ石などとして産出する。地殻には平均 20ppm存在し,海水中の存在量は 0.01 μg/l 。 1801年イギリスの化学者 C.ハチェットにより発見され,コロンビウムと名づけられたが,02年に発見されたタンタルに酷似するので,両者は長い間同一元素とされた。 65年,H.ドビーユと L.トルーストによって,ギリシア神話のタンタロスの娘ニオべにちなみニオブの名がつけられた。単体は灰白色の金属で,展延性がある。融点 1950℃,比重 8.56。化合物は加水分解を受けやすい。ニオブは各種合金に添加され,その品質を高めている。特に鋼材中の炭素固定剤として重要な役割を果す。

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