ニコチン酸欠乏症(読み)ニコチンさんけつぼうしょう(ナイアシンけつぼうしょう・ペラグラ)

六訂版 家庭医学大全科 「ニコチン酸欠乏症」の解説

ニコチン酸欠乏症(ナイアシン欠乏症・ペラグラ)
ニコチンさんけつぼうしょう(ナイアシンけつぼうしょう・ペラグラ)
Nicotinic acid deficiency (Niacin deficiency, Pellagra)
(内分泌系とビタミンの病気)

原因は何か

 ニコチン酸とは、NADNADHNADPNADPHとして多くの酵素の補酵素(酵素の作用発現を助ける物質)として作用し、生体内の酸化還元反応に重要な役割を担った水溶性ビタミンです。

 不規則な食事をするアルコール多飲者で欠乏症がみられることがあります。

症状の現れ方

 ニコチン酸欠乏症(ナイアシン欠乏症)はペラグラとも呼ばれ、皮膚炎、下痢と認知症(にんちしょう)が主な症状です。皮膚炎では顔面、頸部(けいぶ)や手足などの日光に当たる部分に両側性、左右対称性に発赤(ほっせき)水疱(すいほう)痂皮(かひ)(かさぶた)の形成や褐色の色素沈着が現れます。下痢は激しく、一般の止痢薬は無効で、ニコチン酸類の投与が必要になります。

 精神症状としては認知症症状、不安、抑うつ状態せん妄幻覚が現れます。神経症状としては錐体路(すいたいろ)症状、錐体外路(すいたいがいろ)症状、小脳症状、末梢神経障害が現れます。

治療の方法

 ニコチン酸アミドを1日50~100㎎投与します。ニコチン酸だけでなく、他のビタミンBの欠乏を合併することも多いので、ビタミンB1、B2およびB6も併用することが望まれます。

菅原 明

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

内科学 第10版 「ニコチン酸欠乏症」の解説

ニコチン酸(ナイアシン)欠乏症(ビタミン欠乏症)

(4)ニコチン酸(ナイアシン)欠乏症
概念
 ニコチン酸はミトコンドリアなどの酸化還元反応に必須の補酵素で,損傷されたDNAの修復過程にも関与する.ニコチン酸を中心にビタミンB1,B2,B6欠乏やアミノ酸欠乏を伴う栄養障害性疾患をペラグラ(pellagra)とよぶ.アルコール多飲,カルチノイド症候群イソニアジドなどが発症要因である.
臨床症状
 典型的な症状は認知症(dementia),下痢(diarr­hea),皮膚炎(dermatitis)で3Dとよばれる.認知症以外の精神神経症状として幻覚,譫妄,抑うつ,腱反射亢進,パーキンソニズム,痙攣,末梢神経障害などがみられる.
診断
 血中ニコチン酸は正常下限にとどまる場合が多い.尿中の代謝産物であるN-methylnicotinamide(NMN)やNMN-6-pyridone-3-carboxylamideの減少,ニコチン酸アミド投与による治療的診断も有用である.
治療
 ニコチン酸アミド300~1000 mg/日×5日間の経口投与,または筋注.ほかのビタミンも不足している場合が多いので,ビタミンB1,B2,B6,B12なども併用投与する.通常は治療開始後数日で症状は改善する.[中里雅光]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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