ニコチン酸(読み)ニコチンサン(英語表記)nicotinate

デジタル大辞泉 「ニコチン酸」の意味・読み・例文・類語

ニコチン‐さん【ニコチン酸】

ビタミンB複合体の一。無色の結晶。ニコチン酸アミドの形で生体内に広く分布し、特に動物の肝臓に多い。欠乏症ではペラグラになる。化学式C6H5NO2 ナイアシン

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精選版 日本国語大辞典 「ニコチン酸」の意味・読み・例文・類語

ニコチン‐さん【ニコチン酸】

  1. 〘 名詞 〙 水溶性ビタミンビタミンB複合体の一つ。化学式 C5H4N(CO2H) 無色、無臭酸味のある針状結晶酸アミドの形で肝臓、肉、胚芽(はいが)ぬか豆類酵母などに含まれる。一九一〇年、鈴木梅太郎が発見。欠乏するとペラグラ病になる。医薬品として用いられる。ナイアシン。ニアシン。ピリジン‐三‐カルボン酸。ピリジン‐β‐カルボン酸。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニコチン酸」の意味・わかりやすい解説

ニコチン酸
にこちんさん
nicotinate
nicotinic acid

無色安定な水溶性ビタミンB複合体の一つ。3-ピリジンカルボン酸で、ヒトの抗ペラグラ因子。ナイアシンniacinともよばれる。分子式C6H5NO2、分子量123.11。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドnicotinamide adenine dinucleotide(NAD)はその誘導体。まず、ニコチン酸とホスホリボシル二リン酸phosphoribosyl pyrophosphate(PRPP)からニコチン酸リボヌクレオチドnicotinate ribonucleotideが形成される。ニコチン酸はトリプトファン(必須(ひっす)アミノ酸の一つ)から生成される。食物からのトリプトファンの供給が十分な場合、ヒトは必要量のニコチン酸を合成できるが、その摂取が少ないと、皮膚炎、下痢、認知症を症状とするペラグラを発症することを1937年にアメリカの生化学者エルベームConrad Arnold Elvehjem(1901―1962)が証明した。ニコチン酸は広く動植物組織に分布し、肉類とくに肝臓に多く含まれる。トウモロコシの主要タンパク質であるツェインにはトリプトファンがほとんど含まれていないため、トウモロコシを常食とする地方にはペラグラが発生しやすい。またニコチン酸は、生体組織では遊離のものはなく、すべてニコチン酸アミドに変化してニコチンアミドヌクレオチド(ピリジンヌクレオチド)として存在し、生体酸化還元反応に関与している。

 ヒトの場合、トリプトファン60ミリグラムがニコチン酸1ミリグラムに相当するとされている。したがって、ニコチン酸の所要量は、この比率で計算したトリプトファンからのニコチン酸量を合計したニコチン酸当量として表示されることが多い。このニコチン酸当量の必要量は摂取エネルギーに基づいて算出されており、日本では1000キロカロリー当り6.6当量が基準として用いられる。また、過剰摂取した場合は、他の水溶性ビタミンと同様に尿中に排出される。

[有馬暉勝・有馬太郎・竹内多美代]


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化学辞典 第2版 「ニコチン酸」の解説

ニコチン酸
ニコチンサン
nicotinic acid

3-pyridinecarboxylic acid.C6H5NO2(123.11).ナイアシンともいう.ビタミンB複合体の一つで,抗ペラグラ因子.動物の肝臓,肉,酵母,豆類,穀物など生体内に広く存在する.ニコチン,3-ピコリン,3-エチルピリジンなどを濃硝酸,その他で酸化して合成される.針状晶.融点236.6 ℃.昇華性がある.水,エタノールに可溶,エーテル,ベンゼンに不溶.生体内ではトリプトファンから合成され,おもにニコチン酸アミド補酵素(NAD,NADP)の形で存在し,酸化還元反応に関与している.欠乏症は消化器および中枢神経系症状を伴う皮膚変化(ペラグラ)を起こす.[CAS 59-67-6]

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百科事典マイペディア 「ニコチン酸」の意味・わかりやすい解説

ニコチン酸【ニコチンさん】

ナイアシンとも。3−ピリジンカルボン酸C5H4NCOOH。ビタミンB複合体の一つ。生体内でトリプトファンから合成され,一般にニコチン酸アミドの形で生理作用を示す。白色の結晶。ペラグラ,口内炎などの治療剤。(図)
→関連項目ビタミンペラグラ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニコチン酸」の意味・わかりやすい解説

ニコチン酸
ニコチンさん
nicotinic acid

ビタミンB 複合体の一つ。ナイアシンともいう。生体に広く分布し,特に穀物,豆類,肝臓,肉,酵母などに多い。酸味のある針状結晶。水には溶けるがエーテル,ベンゼンには溶けない。消化管から吸収されたニコチン酸は,生体内で補酵素 NAD に生合成される。医薬としてはビタミン B2 と同様にペラグラの予防および治療に用いられる。なお,インドール酢酸とともに植物の芽生えに与えると,その生長を促進する働きが知られている。

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栄養・生化学辞典 「ニコチン酸」の解説

ニコチン酸

 C6H5NO2 (mw123.11).

 ビタミンB群の一つであるナイアシンの活性を示す化合物の一つ.抗ペラグラ因子,ビタミンPPなどとよばれた.NAD,NADP合成の材料となる.

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世界大百科事典(旧版)内のニコチン酸の言及

【ビタミン】より

…ビタミンのなかには体内で生合成されるものもある。たとえばビタミンB複合体であるニコチン酸は,肝臓でトリプトファンから生成される。しかしその量は生体が必要とする量に及ばない。…

※「ニコチン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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