ミトコンドリア(読み)みとこんどりあ(英語表記)mitochondria

翻訳|mitochondria

共同通信ニュース用語解説 「ミトコンドリア」の解説

ミトコンドリア

細胞内にある小さな器官一種で、細胞の働きに必要なエネルギーを作る。細胞の核には両親から受け継ぐDNAがあるが、ミトコンドリア母親だけから受け継ぐ独自のDNAを持つ。科学捜査ほか、古い人骨から採取されたミトコンドリアDNA人類起源などの研究対象にもなっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミトコンドリア」の意味・わかりやすい解説

ミトコンドリア
みとこんどりあ
mitochondria

すべての真核細胞に存在する固有の細胞小器官。この語はドイツの細胞学者ベンダC. Benda(1857―1933)の命名によるもので、ギリシア語の糸mitosと粒chondrosを意味する語の複合語の複数形である。このため、糸粒体とよぶこともある。生きた細胞のミトコンドリアは、ヤヌス緑Bの50万分の1希釈液で青緑色に染色される。培養細胞位相差顕微鏡で観察すると、ミトコンドリアの動きや形の変化がわかる。細菌類ではメソゾームがミトコンドリアにあたると考えられる。ミトコンドリアは直径0.5マイクロメートル、長さ2~3マイクロメートルの大きさのものが多い。電子顕微鏡で見ると、内外二重の膜に包まれた袋で、内膜から内方へ向かってクリスタとよばれるひだ状の隆起が櫛(くし)の歯のように突き出ている。クリスタとクリスタの間の部分はミトコンドリアの基質で、均質な物質からなる。基質に存在するクエン酸回路クレブス回路)により得られた水素は、プロトン(H+)と電子(e-)に分かれ、続いて内膜に存在する電子伝達系により得られたエネルギーが、酸化的リン酸化の機構により、アデノシン二リン酸(ADP)からアデノシン三リン酸(ATP)を生成させる。生命活動に必要なエネルギー源としてのATPを供給する細胞の発電所として、ミトコンドリアはきわめてたいせつな細胞小器官である。そのほか、ミトコンドリアには二価陽イオンの取り込みと蓄積、冬眠動物に多い褐色脂肪からの熱発生、脂肪酸のベータ酸化および精巣、卵巣、副腎(ふくじん)のステロイドホルモン合成などの働きがある。ステロイド産生細胞のミトコンドリアは、管状ないし小胞状のクリスタをもっている。

 ミトコンドリアは、核とは別に独自のDNA-RNA系をもち、構造タンパクを合成し、自己増殖能がある。すなわち、ミトコンドリアは生物の進化の初期に一種の微生物(細菌のような原核細胞)として他の細胞に入り込み、共生関係を生じたという仮説がある。

[小林靖夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミトコンドリア」の意味・わかりやすい解説

ミトコンドリア
mitochondria

すべての真核細胞に多数存在する細胞器官。コンドリオソーム,糸粒体とも呼ばれた。糸状,粒状,ラケット状など,長さ 1~2μmの小体で,細胞の呼吸機能を担う重要な顆粒。有気的条件下ではヤヌスグリーンBで青色に生体染色されるが,無気的条件下では染色されないか,あるいは還元脱色される。電子顕微鏡的には表面は二重,厚さ約 4nmの単位膜で包まれ,内膜が内部の基質内に突出して多数のクリステ (櫛状構造。多くは動物細胞) やビライ (小毛構造。多くは植物細胞) を呈する。基質にはクエン酸回路や脂肪酸代謝に関与する酵素が存在し,また膜系には有気呼吸に必要な電子伝達系が局在し,細胞内呼吸すなわち細胞内エネルギー獲得の役割を果たしている。少量のデオキシリボ核酸 DNAも存在し,自己増殖能を有し,一部分の蛋白質はこれに基づいて合成されるが,ほかの多くの蛋白成分は核DNAの遺伝情報に支配される。進化的起源については,古く進化途上で,一部の小型の好気的原核細胞が,ほかの原核細胞内にもぐり込んでミトコンドリアに変化したという共生説 (寄生説) が有力視される。

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