日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニッポン号」の意味・わかりやすい解説
ニッポン号
にっぽんごう
1939年(昭和14)、毎日新聞が世界一周飛行に使用した三菱(みつびし)重工業製の双発機。1937年の朝日新聞の神風号に対抗した企画で、神風号が日本陸軍の司令部偵察機の試作機だったのに対し、海軍現役の九六式陸上攻撃機を改造して使用した。1939年8月26日東京の羽田空港を出発し、東回りで在留邦人の多い国々を歴訪、10月20日に羽田へ帰着した。この間、訪問予定地のヨーロッパ地区に第二次世界大戦が勃発(ぼっぱつ)してコースを変えたため、全航程5万2860キロメートルとなったが、五大陸20か国を所要日数56日、飛行時間194時間で親善訪問飛行を完了した。乗員は機長中尾純利(すみとし)以下6名、ほかに毎日新聞航空部長大原武夫(たけお)が親善使節として同乗した。九六式陸上攻撃機は約1100機生産され、日中戦争および太平洋戦争に使用された。この飛行の記念碑が東京国際空港(羽田)の毎日新聞社格納庫前に現在も残されている。
[落合一夫]