日本大百科全書(ニッポニカ) 「大庭秀雄」の意味・わかりやすい解説
大庭秀雄
おおばひでお
(1910―1997)
映画監督。明治43年2月28日、東京市赤坂区青山(現、東京都港区)に生まれる。1934年(昭和9)に慶応義塾大学国文科を卒業、同年松竹蒲田(かまた)撮影所に助監督として入社。1939年に監督になり、「大船調」とよばれる女性映画やホームドラマをおもにつくる。とくに1953年(昭和28)から1954年の『君の名は』は、NHK連続ラジオドラマの人気作品の映画化で、空前の大ヒットになる。そのためもっぱら通俗メロドラマの名監督として語られるが、地味なホームドラマにむしろ佳作が多い。1950年の『帰郷』が芸術作品としての代表作であろう。同年の『長崎の鐘』、1951年の『純白の夜』『命美(うる)わし』も大船調のよい面を示した佳作である。感傷的な作品が多くて評価は高くなかったが、しっとりとした情感をかもし出す演出には気品もあった。平成9年3月10日没。
[佐藤忠男]
資料 監督作品一覧
良人の価値(1939)
姉の秘密(1939)
感激の頃(1939)
わが子の結婚(1939)
家庭の旗(1940)
美しき隣人(1940)
家庭教師(1940)
楽しき我が家(1940)
秘めたる心(1940)
冬木博士の家族(1940)
花は偽らず(1941)
心は偽らず(1941)
風薫る庭(1942)
誓ひの港(1942)
二人姿(1942)
むすめ(1943)
暖き風(1943)
勝鬨(かちどき)音頭(1945)
喜劇は終りぬ(1946)
ニコニコ大会 歌の花籠(1946)
人生画帖(1946)
最後の鉄腕(1947)
偉大なるX(1948)
颱風(たいふう)圏の女(1948)
社長と女店員(1948)
美しき罰(1949)
脱線情熱娘(1949)
乙女の性典(1950)
新妻の性典(1950)
長崎の鐘(1950)
帰郷(1950)
ザクザク娘(1951)
純白の夜(1951)
命美わし(1951)
二つの花(1952)
情火(1952)
愛慾の裁き(1953)
君の名は[全3部作](1953~1954)
真実の愛情を求めて 何処へ(1954)
あなたと共に(1955)
絵島生島(1955)
白い橋(1956)
晴れた日に(1956)
天使の時間(1957)
黒い花粉(1958)
花のうず潮(1958)
眼の壁(1958)
ある落日(1959)
若い素顔(1959)
朱の花粉(1960)
「青衣の人」より 離愁(1960)
女舞(1961)
京化粧(1961)
愛と悲しみと(1962)
あの人はいま(1963)
残菊物語(1963)
雪国(1965)
横堀川(1966)
春日和(1967)
稲妻(1967)
永訣(わかれ)(1969)