久松静児(読み)ひさまつせいじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「久松静児」の意味・わかりやすい解説

久松静児
ひさまつせいじ
(1912―1990)

映画監督本名久松重男。明治45年2月20日、茨城県新治(にいはり)郡栄村(さかえむら)(現、つくば市)に生まれる。第一外語学校英語科中退。1929年(昭和4)河合映画に入社。俳優から助監督になり、翌年帝国キネマに移る。1931年、この会社が新興キネマに変わり、1934年に『暁の合唱』で監督になる。新興キネマが他社と合併して1942年に大映になると、久松静児は引き続きここでB級の娯楽作品をつくり続けた。しかし、高校生だった息子から「代表作がない」と批判されたことにショックを受け、一念発起して1951年(昭和26)の『泥にまみれて』を批評家たちの注目する佳作に仕上げる。1954年に日活に移り、1955年には『警察日記』『おふくろ』『月夜の傘』『続警察日記』などの秀作を出した。以後も『神坂四郎(かみさかしろう)の犯罪』(1956)、『南の島に雪が降る』(1961)などがよくできた作品として知られる。平成2年12月28日没。

佐藤忠男

資料 監督作品一覧

暁の合唱(1934)
花嫁突進(1934)
新版夫婦読本(1934)
恋愛ホテル(1935)
女流探訪記者(1935)
東部暗黒街(1936)
美人の犯罪(1937)
お龍妖艶記(1937)
乙女一九(1937)
海軍爆撃隊(1937)
軍国母の手紙(1937)
呼子鳥 母の時代(1937)
二人は若い(1938)
青春オリンピック(1938)
トーチカ娘行状記(1938)
愛の饗宴(1938)
歌姫懺悔(1938)
新月の歌(1938)
若い女の危機(1938)
評判五人娘(1939)
紅痕(1939)
女の魂(1939)
愛憎の書(1939)
男一匹(1939)
岩に咲く花(1939)
快男児(1939)
娘の春(1940)
母の願ひ(1940)
嘆きの花傘(1940)
闘ふ母(1940)
南国絵巻(1941)
大都会(1941)
旋風街(1941)
春遠からじ(1942)
夜光る顔(1946)
パレットナイフ殺人(1946)
盗まれかけた音楽祭(1946)
女囚36号(1947)
蝶々失踪事件(1947)
三面鏡の恐怖(1948)
新愛染かつら(1948)
面影三四郎(1949)
毒薔薇(1949)
花の日月(1949)
母燈台(1949)
氷柱の美女(1950)
美貌の海(1950)
東海道は兇状旅(1950)
指名犯人(1950)
宮城広場(1951)
泥にまみれて(1951)
霧の夜の恐怖(1951)
炎の肌(1951)
浅草紅団(1952)
生き残った弁天様(1952)
安宅家の人々(1952)
二つの処女線(1952)
秘密(1952)
妖精は花の匂いがする(1953)
怒れ三平(1953)
地の果てまで(1953)
十代の誘惑(1953)
放浪記(1954)
女の暦(1954)
母の初恋(1954)
警察日記(1955)
おふくろ(1955)
「春情鳩の街」より 渡り鳥いつ帰る(1955)
月夜の傘(1955)
続警察日記(1955)
神阪四郎の犯罪(1956)
雑居家族(1956)
女囚と共に(1956)
雨情(1957)
裸の町(1957)
怒りの孤島(1958)
母三人(1958)
つづり方兄妹(1958)
みみずく説法(1958)
愛妻記(1959)
愛の鐘(1959)
飛びっちょ勘太郎(1959)
路傍の石(1960)
新・女大学(1960)
地の涯に生きるもの(1960)
河内風土記 おいろけ説法(1961)
女家族(1961)
喜劇 駅前団地(1961)
南の島に雪が降る(1961)
喜劇 駅前弁当(1961)
愛のうず潮(1962)
喜劇 駅前温泉(1962)
早乙女家の娘たち(1962)
喜劇 駅前飯店(1962)
クレージー作戦 先手必勝(1963)
喜劇 駅前茶釜(1963)
わんぱく天使(1963)
丼池(どぶいけ)(1963)
僕はボディガード(1964)
沙羅の門(1964)
花のお江戸の法界坊(1965)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

20世紀日本人名事典 「久松静児」の解説

久松 静児
ヒサマツ セイジ

昭和期の映画監督



生年
明治45(1912)年2月20日

没年
平成2(1990)年12月28日

出生地
茨城県新治郡栄村(現・桜村)

本名
久松 重男

学歴〔年〕
第一外語学校英語科中退

経歴
河合映画、帝キネを経て、新興キネマに入り、昭和9年監督に昇進、「暁の合唱」でデビュー。メロドラマ映画や国策映画を撮り、17年応召。戦後はスリラー映画に意欲を燃やし、27年「安宅家の人々」で注目される。28年フリーとなり、「女の暦」「母の初恋」と力作を発表。29年から日活と契約、第1作「警察日記」で第一線監督としての地位を確立。30〜35年に庶民派監督としての一連の佳作を発表、この間東宝で“駅前シリーズ”を5本撮り、42年以後再びフリーとなって活躍した。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「久松静児」の解説

久松静児 ひさまつ-せいじ

1912-1990 昭和時代の映画監督。
明治45年2月20日生まれ。昭和9年新興キネマの「暁の合唱」でデビュー。31年日活の「警察日記」で芸術選奨。36年から東京映画の駅前シリーズ「駅前団地」などの喜劇を連続してとり,庶民派監督として活躍した。平成2年12月28日死去。78歳。茨城県出身。第一外語学校中退。本名は重男。作品に「安宅家の人々」「放浪記」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

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